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読売演劇大賞 優秀作品賞のミュージカル『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』 柚希礼音、ソニン、実咲凜音、清水くるみ、平野綾 取材会「再演では初演の1億倍以上で」

2019年読売演劇⼤賞 優秀作品賞を受賞したミュージカル『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』が、約 4 年ぶりに2023 年 6 ⽉に再上演される。
この作品に初演から引き続き出演する柚希礼音、ソニン、実咲凜音、清水くるみと、今回から新たに加わった平野綾が、取材に応じてくれた。

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平野綾、ソニン、柚希礼音、実咲凜音、清水くるみ

本作はブロードウェイで活躍する新進気鋭の作曲家コンビ、クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニーによって作られたパワフルなロックサウンド満載の原案をもとに、板垣恭一が脚本と演出を担当して生まれた日本発のオリジナルミュージカル。
描かれるのは、19 世紀半ばの、アメリカ北部の織物工場を舞台に、女性の権利を求めて労働運動を率いた女性たちの物語。
初演では、丁寧な作品作りに支えられた実力派キャスト達のあふれるエネルギーと、今の時代にも通じるメッセージが大きな共感を呼び、日本のオリジナルミュージカルの新たな扉を開いた作品として高い評価を得た。
オリジナルミュージカルを作る苦労と本作の魅力、そして再演への意気込みを、たっぷりと語ってくれた。

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ミュージカル『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』集合ビジュアル

―再演が決まった時のお気持ちから、お聞かせいただけますか?
柚希礼音(サラ役)
:初演では、宝塚在団中以来だと思うほどたくさん、皆で一緒に自主稽古をしました。最後のストライキの場面では、顔の向きも「こっちを向いてからこっち?」「どっちがいい?」とたくさん話し合い、稽古しました。本当に大好きな仲間たちでした。その作品で賞をいただけるなんて本当に感動しましたし、その授賞式で会って以来の久しぶりの再会で、またこの作品が一緒にできるなんて嬉しいです。
あれからコロナ禍を経て、さらに感じることも多いでしょうし、いろいろな思いを込めたい。そして、新たなメンバーが加わってくれることで、新鮮にもう一度、ゼロからみんなで作り上げたいと思っています。

【FG15】

初演時舞台写真

ソニン(ハリエット役):私は初演の大阪公演ぐらいから「再演するべき、したい」と思っていたし、やるべきだと思っていました
柚希:え~、すごい!
ソニン:柚希さんもおっしゃったように、 初演では皆でイチから作り上げました。元々アメリカで作られた楽曲と大筋はあり、(脚本・歌詞・演出の)板垣恭一さんが脚本を起こしてくださり、そこから更に歌詞も内容も脚本自体も稽古で変わっていきました。与えられたものを演じるだけでなく、自分たちで作っていったので、初演の大阪公演が終わる時点で「もっとより良くお客様にメッセージが伝わるには、こういうアプローチは?」「ここは掘り下げた方がいいよね」と改善点が見えてきて。それが頭の中にあったので「絶対に再演するだろうな」と思っていましたし、作品賞を頂いて「これは再演確実だな」と思いました。自分がプロデュースしているぐらいの気持ちで「再演はいつかな?」と思っていましたよ。
一堂:(笑)
ソニン:そして「これ以上、(再演までの期間を)空けると、再演はなかなか難しくなるな」と思っていた時に「再演できそうです」とお話を頂いて「来た!」と思いました。私は「ようやく」という気持ちと「あの作品をどうブラッシュアップすれば、より良く仕上がるか」と、ワクワクでいっぱいです。
実咲凜⾳(アビゲイル役):再演が決まって、私も本当に嬉しかったです。初演では公演しながら、お客様からのお声が温かくて。
柚希ソニン:私もいまだに言われます!
実咲:そうしたお声のおかげもあるだろうと思いますし、あんなに大きな賞をいただけたのは本当に嬉しかったですし、光栄でした。
柚希:無名の作品だったけれど、公演が始まってから皆様のお声で…。
実咲:そうなんですよ。だから、もう一度挑戦できるのがすごく嬉しいです。
清水くるみ(ルーシー役):初演はコロナ禍前の作品で、女性がメインの舞台はそんなに多くなかった気がしていたので、あの頃はチャレンジングな作品だなって思っていました。でも口コミがどんどん広まって、結果たくさんの方に観て頂けました。そして、今、女性をメインにした作品が増えてきた中で、読売演劇大賞を頂いての再演。ブラッシュアップされて、お客様にどう受け入れてもらえるのかなと楽しみです。いいものを作っていきたいと思います。

―平野さんは今回からの参加ですね。初参加のお気持ちをお聞かせいただけますか。
平野綾(マーシャ役):初演時に「すごいらしい」「今の時代に合った内容で、演じている皆さんのパワーがものすごい」と、いろいろなところから聞いていました。「確かにそうだな」と思う出演者の方々が揃っていて、作品力も素晴らしいと聞いていたので、お話をいただいた時は「あの作品ですか⁈」と、すぐにピンときました。
今は歌稽古が始まったばかりですが(取材時)、皆さんの現場でのディスカッションや、現場のすべてが「作品のため」と、自分の持っている能力の全てを作品につぎ込んでいる。そのスタンスがすごくいいなと思っています。だから初演が高く評価されていたのだと、納得がいきました。これから本稽古が始まって、どう新しく生まれ変わるのか、すごく楽しみです。

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―それぞれの役どころについて、お好きなところや、演じ甲斐のあるところ、他の役で好きなところなどを教えていただけますか?
柚希:田舎から出てきた純粋なサラが「なぜ皆、この環境で我慢しているの?」「なぜ誰も文句言わないの?」と疑問に思うことから始まります。それによって皆が傷付いたり、いろんなことが起きる中「自分はちょっと出すぎたわ」と思ったりもする。しかしそんなサラを「ついていくからやってごらんなさい」と周りの人が背中を押してくれ、いろんな人が助けてくれます。サラがそういうリーダーなのが、すごく好きです。引っ張っていく感じではなく、サラ自身もすごく葛藤して「今度こそ辞める」と思うのに、その時に限ってみんなが背中を押してくれて、一歩ずつやっているうちにどんどん大きくなっていきます。そしてソニンちゃん演じるハリエットに教わって、文章の力で戦っていきます。サラは実在の人物なので、本当のところはどうだったのかと、初演でも考えましたが、今回作っていただいたサラ・バグリーをしっかりと演じたいと思います。
ソニン:ハリエットは今の女性や、中間管理職の方々に近く、多く共感して頂けるところがある役柄なのではと思います。「女性がこれから権利を獲得して、自由を求めるため」と考える中で「今は出るべきじゃない」「ここは我慢しておくべき」と考えて葛藤しています。初演でも意識しましたが、今回、改めて台本を読み、曲を歌ってみて、ハリエットはすごく理知的ということを再認識しました。感情的にもならず、信念も持って先を見据えてどうすべきかを論理的に考えて実行しています。それを役として表現し過ぎてしまうと、感情が表に出てしまうので、初演では最後のハリエットのために、感情の表現を一歩手前で我慢することにこだわって演じました。初めてのチャレンジが多い作品だったので、今回、三年間の経験を経て、少し違うハリエットの思いや、彼女の頭の中を表現できたらと思っています。

【FG11】
初演時舞台写真

実咲:アビゲイルはかっこよすぎるくらいの理想の女性像だと思います。サラとハリエットを見ながら、その先も俯瞰して読んでいて、いろんなものがちゃんと見えている女性。しかも熱いものを持っている人です。炎は赤く燃えているところより、根本の青いところの方が熱いじゃないですか。そんな青い炎に近いものをずっと持ちながら冷静さもある。初演から、すごく素敵な女性像だと感じていましたし、難しいとも感じていました。彼女の役どころが大好きですし、この三年で、いろんな経験をさせていただいて、今回はもっと大きく表現できるようにと思っています。
清水:私が演じるルーシーが、初演から一番キャラクターが変わったと思います。宣伝ビジュアルも初演と再演では全然違います。(再演では初演版ビジュアルでは無かったメガネをかけている)ルーシーは恋もしたいし、おしゃれもしたいけど、文学も大好きで、サラを誘導したりもする。アビゲイルみたいにしっかりしている部分もあるけれど、アビゲイルやマーシャほどいききらない部分がある。ルーシーのキャラクターを考えて、眼鏡をかけてオタクの感じでやったら、バランスも良かったようで、本番では眼鏡をかけることになりました。初演では悩みに悩んで迷走もしましたが、板垣さんが自由にやらせてくださり、イチから全部自分で考えて作った役なので、とてもルーシーに愛着があります。作品全体もすごく好きなので、もう1回演じられるのはすごく嬉しいです。
平野:先ほど板垣さんが「再演ではセリフも多少変わっている部分がある。特にマーシャは、おしゃれで女の子っぽくて、男性に対しての接し方も他のキャラクターとは違う。なぜそうなっているのか。見せている面だけが全てじゃない。その裏側を全部、今回の作品では演じてほしい」とおっしゃっていました。
柚希:楽しみ!
平野:いろいろな人がいる中、マーシャはかなり客観的にこの世界を見て、したたかに生き抜こうとしている子だと思うので、その部分をより強調して出せたらいいかなと思っています。

―歌やダンスもパワフルで見どころたくさんですが、お薦めやご苦労されたところをお願いします。
柚希:本当に色々なリズムがあり難しいのですが、初演では「譜面とリズムを絶対に守ろう」と、皆で注意し合ってできたのがよかったと思います。主にソニンちゃんが言ってくれたおかげで皆に気を付けようという意識がどんどん芽生えてきて率直に言い合える仲になっていったのがすごく良かったです。
公演中も最後の最後まで(指で三角形を描き)でリズムをとりながらやっていたほどです。
ソニン:三拍子が多いのでね。
柚希:ただ「感情で」といきそうなものを、皆がその意識をとても大切にしていったので、すごく揃ったし一体感が生まれたと思います。再演ですが、初めて譜面を見る気持ちに戻って、新たなメンバーと共に、また皆で頑張りたいと思っています。
ソニン:私は皆と戯れて歌うのが1曲だけ。皆が歌っているときに、私一人だけ別のメロディーを歌っていることが多くて。本当に寂しいです(笑)。

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―ダンスはいかかですか?
清水:私たち、そんなに踊ってましたっけ?
一同:踊っていたよ!
清水:「これ(機織りの手振り)見たよ!」とよく言われますけど。(一同:笑)
ソニン:私もそれをやりたい!ハリエットが工場で働いている描写が少なかったから「ハリエットも一緒に(機織りを)やった方がいいのでは」と板垣さんに相談したのですが、(初演では物語の進展上)できなかった。
柚希:それはやってほしいね。ハリエットも元々は工場にいたことが分かりづらいから。
ソニン:初演でも、ワッペンを渡す場面を足したりしたじゃないですか。再演では、工場での仲間だという描写がもう少し足されていくと思います。
柚希:私がスカートで踊っていたソロは、別の見せ方をするのかなと思います。
一同:楽しみ!
ソニン:ストライキの場面で、「戦うぞ!」という感じが足りないということになり、「(私が)やりましょうか?」と(拳を振り上げるのを)伝授した記憶がある。(笑)
柚希:あの場面は自主稽古が熱かった。
ソニン:(自分は)全然参加しない場面。むしろストライキを止める側なのに。(笑)
一同:(ソニンは別作品で)革命やっているからね。(笑)
実咲:アビゲイルが真ん中で皆を引き連れていく場面で、その感覚が分からず悩んでいた時に、ちえ(柚希)さんが「自分の後ろに、何百何千の人の思いを背負っている気持ちで前へ歩くんだ」と伝授してくれたのをすごく覚えています。
ソニン:(柚希さんは)経験者ね。
柚希:娘役では、そういうことしないよね。
実咲:この伝授を受けたのが、すごくよかった!
柚希:今回も見ておくね。(笑)
ソニン:今回は振付が変わるかもしれないけれど、マーシャのダンスがすごく可愛くてぴったりだと思う。
柚希:とても楽しみ!
実咲:いいナンバーですよね。
平野:頑張ります!マーシャの本心はちょっと置いといて、男性に見せている顔として、全力でアイドルを振り切ってやろうと思います!(一同拍手喝采!)

 

―最後にお客様に向けてメッセージをお願いします。
柚希
:「再演をお願いします!」「再演決まった!やった!」というお声をたくさん頂いた作品で、友人からもいまだに、この作品のセリフを引用したメッセージが届くほど。働いている女性たちに突き刺さった作品だと思いますし、初演の終演後には女性だけでなく男性からのご感想もたくさん頂きました。
再演では初演の1億倍以上でより細かく心情から全部作り、お客様に感動していただけるように頑張りたいと思います。みんなで本当に頑張りますので、楽しみにしていてください。
ソニン:私が柚希さんに信頼を置いていて、やりやすいと思うのは柚希さんがストイックだから。モチベーションにズレがあると「やり過ぎない方がいいかな」と遠慮してしまったりしますが、初演の時に柚希さんが謙虚に向き合われている姿を見て「すごい!私も遠慮なくストイックにやろう」という気持ちになれました。
実在したサラとハリエット、このふたりの軸がしっかりしていないと、物語がふわっとした大まかな“女性”の話になってしまうから「それぞれの人生をしっかり背負わないと」という気持ちがあります。そして、この作品の色々なタイプの女性たちを私たち1人1人がしっかり見せることで、多様性を自覚している方が多い現代のお客様が「女性を一つのフェミニズムにまとめられると困る」という気持ちにならずに観ていただけるのかな…と考えています。
板垣さんから男性側の視点ももらいつつ、たくさん話し合って、偏らないように、もっと彩り豊かに作れたらと思っています。
実咲:今、ソニンさんが、この作品を深く汲んでお話しくださっていて、同じ思いを感じながら聞いていました。新しく加わったメンバーもいらして、少しずつ変化するところもたくさんあると思うので、そういうことを踏まえながら、私自身、もう1回、イチから台本を読んで、初めて参加するぐらいの気持ちで取り組めたらと、改めて今、感じています。そして、今回、観てくださった方から「素晴らしかった」「本当に感動した」「また頑張ろうと思った」「勇気もらった」という言葉を頂けるように、更に精進したいと思っています。

清水:大事な部分はもちろんですが、私とマーシャがポップな部分を担っていると思うので、そのバランスをうまく取れるようにやっていきたいと思います。私は、努力度が先輩たちよりまだまだなので、ついていきます!
一同:え~、そうかなぁ?そんなことないよ。
清水:ついていきます!
平野:今のお話だけでも、皆さんが初演から台詞の一言一言にどれだけこだわりを持ってこの作品を作っているかが伝わってきて、本稽古が始まる前にこの取材があってよかったと思っています。しかも事前にイベント(日比谷フェスティバル)で歌唱させていただきながら、こうやって皆さんのお話を聞けて、自分が関わるからには、より作品を深められるように頑張らなきゃと、今日ですごく気合いが入りました!

【初演ダイジェスト映像】

 

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ミュージカル『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』
作詞/作曲:クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニー
脚本/歌詞/演出:板垣恭一
出演:
柚希礼音 ソニン/実咲凜音 清水くるみ・平野 綾/水田航生 寺西拓人
松原凜子 谷口ゆうな 能條愛未/原田優一・戸井勝海/春風ひとみ 他

オフィシャルHP:http://musical-fg.com/
オフィシャルTwitter:@factorygirlsjp
企画・製作:アミューズ

【東京公演】
公演期間:2023年6月5日(月)~6月13日(火)
会場:東京国際フォーラム ホールC
主催:アミューズ/イープラス

【福岡公演】
公演期間:2023年6月24日(土)・6月25日(日)
会場:キャナルシティ劇場
12:00~15:00に短縮
主催:キョードーグループ/サンライズプロモーション東京

【大阪公演】
公演期間:2023年6月29日(木)~7月2日(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
主催:関西テレビ放送/キョードーグループ