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三島由紀夫作品の「美と毒」「数学的面白さ」など4作品 『MISHIMA2020』取材会レポート 

三島由紀夫が自決した衝撃的な事件から50年。今なお輝く三島文学に改めて光があたる年となった2020年に、4人の演出家が三島の世界に挑む演劇『MISHIMA2020』が、9月21日(月・祝)から日生劇場で上演される。9月9日(水)に出演する女優陣が参加して取材会が行われた。公演のチケット一般発売は9月13日(土)より。

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麻実れい   橋本愛  中村ゆり  菅原小春   伊原六花

今回上演されるのは、
◆『真夏の死』 (『summer remind 』) /作・演出:加藤拓也
出演:中村ゆり 平原テツ
◆『班女』 近代能楽集より /演出:熊林弘高
出演:麻実れい 橋本愛 中村蒼  他
◆『憂国』(『(死なない)憂国』) /作・演出:長久允
出演:東出昌大 菅原小春
◆『橋づくし』 /作・演出:野上絹代
出演:伊原六花 井桁弘恵 野口かおる / 高橋努
の4作品。

 

『橋づくし』に出演する伊原六花
今、舞台に出演させて頂ける、お客様に観ていただける環境を、とても有難く思っています。
『橋尽くし』の面白さは、数学的面白さで、見れば見るほど発見していくことがたくさんあります。私自身は「なるほど、そうだったのか。やられた!」と思いました。そして心に思うことを体で表現する新しさがあると思います。キャスト自身が考えて表現していくのが見どころだと思います。

『憂国』(『(死なない)憂国』)に出演する菅原小春
三島さんという方に魂でぶつかっていけたらいいと思います。
『憂国』に対して長久允さんが初めて舞台の演出をされます。長久さんが『憂国』に対し、サブタイトルで『死なない』を掲げています。それが、長久さんと私たちの挑戦状です。“生きる”ということが何か。今ここで呼吸をしていることが“生きる”なのか、抱き合うことが“生きる”なのか、踊ることが“生きる”なのか……1人ひとりの中に“生きる”ということ、“死なない”ということがあると思います。その挑戦状をお客様に届けるという気持ちはもちろんですが、三島さんにも叩きつけられるように、しっかりと向き合っていきたいと思います。

『真夏の死』に出演する 中村ゆり
今、厳しい中で「演劇をなくしたくない」という気持ちで舞台に立てることが有難いです。映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』を見に行った数日後にこのお話を頂いたので、ご縁だと思っています。がんばります。
70年前に書かれた『真夏の死』という作品を、26歳の加藤拓也さんが現代の話に書き換えて、豊かなものに仕上げた。新しい才能だと思います。遊び心ある感性も、たくさん演出に反映されています。
『真夏の死』は不慮の事故で子供を亡くしてしまった夫婦のお話です。今はますます個人主義になり、コロナもあって、人との距離がより難しくなっている。悲劇に遭った人たちが世間から置いてきぼりになって苦しむということが、この作品が今と重なるところで、これからはもっとテーマになると思いますが、三島さんは当時からすでに見据えていたのだと思います。三島さんが亡くなって50年経ちますが、今こうして三島作品4作品を上演できることで、私たちが生きるために何かが学べると思います。お客様にとっても考えるきっかけになればと思っています。

『班女』に出演する麻実れいと橋本愛
橋本:演出の熊林弘高さんはすごく好きな演出家で、ご一緒できることが夢のようです。私は舞台出演がまだ2度目の新参者なので、熊林さんと麻実さんのそばで「演劇は深くて奥ゆかしくて最高!」と感じる毎日をすごさせて頂いて幸せです。
コロナがあって、接触演出家と言われる熊林さんの身体芸術という得意技をはぎ取ることになりましたが、2mを保ったままくっつくという新しい身体芸術を日々模索しています。身体の距離と心の距離が一致せずに、身体を通して心が見えて、言葉を通して心が見えて、それが身体で表現されている。点が散らばっていて、それがつながって見えるという宇宙的イメージがあります。私は狂女を演じますが、一人の女、人間、動物としての辻褄を、今、細かく見ています。そこを乗り越えた美を見せられたらと思っています。

麻実:三島作品は『葵上』『卒塔婆小町』に続き『班女』が三作品目になります。この実子役をご縁があったものだと思い、大切に作り上げたいと思います。三島さんの美しい言葉に負けないで、実子の心情をきちんとお届けできたらば幸せだと思っています。
熊林弘高さんと愛さん、蒼さんと作り上げる近代能楽集『班女』を上演させていただくのですが、こういう状況下ですから実験的な演劇を強いられると思います。稽古場でも自然に間隔をとることができているので、何か今までと違う三島さんの世界をお見せできるのではと、とても期待しています。
今回演じる実子は、ものすごく難しいですが、とっても素敵なメンバーがそろったので、私たちだけの『班女』を作り上げて日生劇場の舞台からお届けしたいと思っています。
三島さんの作品の、美しさと毒をお客様にお見せしなくてはいけない。この舞台を通して、三島さんの姿をなんとなく感じていただけたら幸せだと思います。

『MISHIMA2020』メインビジュアル

三島由紀夫没後50周年企画
『MISHIMA2020』

◇日程・演目
<2020年9月21日(月祝)~22日(火祝) 3公演>
『橋づくし』 /作・演出:野上絹代 出演:伊原六花 井桁弘恵 野口かおる/ 高橋努
『憂国』(『(死なない)憂国』) /作・演出:長久允 出演:東出昌大 菅原小春
<2020年9月26日(土)~27日(日) 3公演>
『真夏の死』(『summer remind 』)/作・演出:加藤拓也 出演:中村ゆり 平原テツ
『班女』近代能楽集より /演出:熊林弘高 出演:麻実れい 中村蒼 他
◇会場:日生劇場
◇料金:S席 8,000円/A席 6,000円
◇一般発売:9月13日(日)
◇企画・制作・主催:梅田芸術劇場
◇公式ウェブサイト:https://www.umegei.com/mishima2020/