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舞台『ル・シッド』 インタビュー 侍女エルヴィール役 如月蓮、さえずり・パノブ役 貴澄隼人

 

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全キャスト女優のみで上演する舞台『ル・シッド』が、あさって、7月21日(水)からいよいよ開幕する。
フランスで1637年に初演され、普段劇場へいかない女給など女性を中心に大ヒットした演劇史上最も愛されたとされる本作を、宝塚歌劇団出身、劇団四季出身、劇団新派在籍の女優陣の顔合わせで日本初演として上演。生のピアノ演奏も入り、レビュー的要素も含まれた活劇として蘇える。
作品を代表して侍女エルヴィール役・如月蓮、さえずり・パノブ役 貴澄隼人に話を聞いた。

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如月蓮   貴澄隼人

≪稽古初日からフルスイングでとても斬新で新鮮!≫

――稽古の初日は演出の笹部さんの熱が凄すぎて、笑いがこぼれるほどインパクトのある読み合わせでした。

如月通常、本読みは着席して読むことが多いのですが、笹部さんの熱い方針に、いつの間にか全員起立した状態で、まるでお稽古終盤くらいの熱を帯びた本読みでした。顔合わせでもある稽古場初日でしたが、「はじめまして」の代わりに“私はこんな芝居をします”というような、芝居でご挨拶をしているようでした。現代ではスタンプ一個で想いを表現してしまう世の中ですが、古典演劇ならではの、全部言葉にしてセリフで心情を伝える。その演出が、稽古初日からフルスイングで、とても斬新で新鮮で面白かったですね。(笑)
お稽古はシンプルな一本道がすごい山だったり谷だったりしている感じのイメージです。先生が示してくださる目指す道が見えているのに行くのが大変!みたいな感覚かな。

貴澄:ずっと宝塚歌劇団で男性役を演じてきて初めての女性役です。初日に読み合わせをした時に、笹部先生が求めていらっしゃる役のキャラクターが、自分が思っていた以上にコメディに近く、今まで演じたことがないキャラクターだったので、どれだけ自分がそこに飛んでいけるかが一番の挑戦です。
私の役は原作に無い役でオリジナルキャラクターになります。先生がいつも『それぞれの役がそれぞれみんなの中にあるから、それを引き出す』とおっしゃっていて、皆さんのお芝居の土台ができてそこに肉付けられていく役なので、それまでの間にどうしたらうまいこと乗っていけるか、日々変化する皆さんの演技を見ながら考えて稽古場で勉強させて頂いています。

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――自由なようでとても難しい役どころですね。

貴澄:そうなんです。皆様は物語の中の人物ですが、私はステージと客席をつなぐ役どころでいなければいけない。いい意味で場面を壊さないといけない所が難しい点で、いろいろ挑戦したいと思います。

≪感情ではなく思考で話す≫

――台本について伺います。最初の印象から稽古で変化した所は?

如月「私は人間の見せたくない部分とか、恥ずかしいとか、そういうものを全部さらけ出している作品だと思いました。嫉妬や人間の醜い部分をさらけ出すことによって、より愛おしく見えていくところがすごく魅力的で、そしてこれが現代にも必要だなと感じました。
最初セリフが長くてお客様は飽きないかな、大丈夫かなあと思ったんです。でも人間のたくましさや成長が芝居だからこそ見えてくる。台本をただ読んでいた時と人が立って想いをぶつけて演じることの違いをより感じる作品ですね。

貴澄:私も台本を頂いて初めて読んだ時は、セリフが長い!と思って(笑)。一番長いセリフだと確か3ページくらいの方もいらして、でも実際に笹部先生の演技指導を聞いていると面白くて。
とても言葉を大事にされていて『感情ではなくて思考で話しなさい』とおっしゃっていまして、今までは感情で演じなきゃと思っていて“思考”は挑戦でしたが、他の方の演技を見ているとなるほど!と。感情より思考で喋っている方が情景が浮かんでくるんです。これが先生がおっしゃっていたことかと。

――役について、何を意識して演じようと思っていますか?

如月:(お仕えする)シメーヌありきのエルヴィールですね。でも自分を失っているわけではなく、もしかしたら頭が一番冷静にフル回転しているかもしれないと思ったり。視野が広い人で、お嬢様に何が起こっているのか、何を思っているのかいち早くキャッチしてお嬢様の環境を整える(笑)。
時代的にそう生きるしかなかったのか、それとも自分の中で思うことがあって府に落としてから仕えているのか、その当たりはもっと深めていきたいと思っています。
SNSも何もない時代で、ただ人間としての自然な欲求に従っている。お嬢様が例えどんな選択をしたとしても、シメーヌと共に生き、悲しみも喜びも受け止める役。シメーヌのサンドバック、一番の理解者でありたいなと思っています。

貴澄:パノブはお客様と演者の間のポジションなので、お客様の気持ちもくんで演じることができるような役割が果たせたらなと思っています。皆さんは命より誇りや名誉を大切にしていて、それがあの時代の方々の考え方で、でも私たちはどちらかと言うと、名誉より命のほうが大事という考え方が強いのではと。そこが根本的な価値観として一番違うので、現代に生きる人間の価値観を大切にして、より原作とのギャップ感を生みだして、作品の幅を広げることができたら。

如月:この作品は音楽が入ってきたらまた変わるってくるよね。

貴澄:唄うかもしれないと言われていまして(笑)まだわかりませんが。本番までドキドキしますね。

――客席の反応からも演技プランが変わってきそうですね

貴澄:物語の進行役にもなるようなので、対応力が鍛えられそうです。

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≪日常は平凡がいい。でも演劇はドラマチックがいい≫

――あらためて気が付いた、宝塚OGの稽古あるあるなどはありますか?

如月:舞羽さんがテニスボール2つとゴルフボール1つでいつもゴリゴリほぐしているね。この作品はストレートプレイなのにウォーミングアップをしたくなる。

貴澄:今回、体力が必要な競技っぽいですもんね。舞羽さんはずっと踊りをされていたので筋肉をほぐしたくなるんでしょうね。

如月:何時でも対応できるように準備しておきたくなります。あとタカラジェンヌで言えば、旺さんと初めてご一緒致しますが、初めてな気がしない。

貴澄:あ!わかります!。

如月:過去に共演したことがあったかもしれないと思う安心感!。

貴澄:それは思います、すごい先輩なのに何か知ってる感。

如月:私のセリフで『あなた様の中にその血が脈々と流れている』というのがあって、タカラジェンヌの血がみんな脈々と流れてるなとは感じます。同じ組だった人は特に、あの時のあの役を思い出すとか、男役の声や立ち振る舞いに懐かしい感じがよみがえることはありますね。

貴澄:タカラジェンヌの血は感じますし、稽古場も優しい感じがします。

――それぞれが想う見どころ、注目ポイントを教えてください?

如月:普段見せない心の深層をさらけ出すことによって自覚し成長していく部分に私は魅力を感じているので、魅力であり見どころのひとつではないかなと。
私の役は観る人が色々想像できる役だと思うんです。あまり固定せずに、自由に見てくださった方がお嬢様にとってこういう人なんだと、暖かいものが伝わったらいいなと思っています。
そして恋愛バトルと銘打っていますが、本当にバトっています(笑)。現代とは生き方や価値観が全く違うので、全然違う物語を自分の中に入れることによって新しい感情が生まれたり、心が豊かになったらいいなあと思っています。注目ポイントとして、うちのお嬢様(舞羽)はカワイイです!ご贔屓にお願いします(笑)。

貴澄:舞台を進行していく役割として笹部さんから『カフェラテを飲んでいる感じ』と言われまして、お客様に古典の良さをお伝えしつつ、気楽に観ていただく部分がポイントかなと。そして私はずっと舞台上のどこかにいることになりそうです。物語に良い効果を与えられるスパイスの様なお芝居ができたらと思っています。今回ならではの作品をお届けいたします。

如月:さえずりっていい名前だよね。小鳥のさえずりは本当に心地いいんです。舞台の中で心地良い存在になりそう。作品を豊かにする役割なのかなって。

貴澄:本当に!そうなれたらいいですね。

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――最後にお誘いのメッセージをお願いします。

貴澄:いま世界中が大変な時に、演劇の役割として人々に元気を与えられる存在でありたく、この作品がその役割を果たせたらいいなと思っています。演劇を観ることが日々の活力になれたら。オリンピックに負けない熱いパワーがみなぎっています。そのパワーを持って帰ってください。

如月:笹部先生のお言葉を借りますと、『日常は平凡がいい。でも演劇はドラマチックがいい』。
この作品は人間にしかない感情が沢山詰まっています。しかも出し惜しみなく嘘が全くありません。登場人物達は本気で生き、死んでもいい覚悟で自分の信念を貫いています。今の時期だからこそ観ていただきたいと思います。愛とは何か…答えは『ル・シッド』にあります!!

取材/撮影:谷中理音

▼公演概要▼
舞台『ル・シッド』
作:ピエール・コルネイユ
上演台本・演出:笹部博司(米村晰 訳より)
公演:2021年7月21日㈬〜25日㈰ 会場:池袋・あうるすぽっと
ご観劇料:S席8,800円 A席6,600円(税込・全席指定)
出演:亜聖樹、井上希美、宇月颯、旺なつき、小川絵莉、如月蓮、貴澄隼人、十碧れいや、舞羽美海、麻央侑希(50音順)
音楽・ピアノ演奏:TAKA
企画・製作:有限会社アーティストジャパン
公式サイト: https://artistjapan.co.jp/

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