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舞台「DOORS」奈緒 衛星劇場オフィシャルインタビュー

不思議な世界の中で母親との確執を乗り越え、力強く一歩を踏み出す
今だからこそ見ていただきたい、希望に満ちた作品です

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ある日突然、母親の性格が入れ替わっている――!? そんな奇想天外な舞台『DOORS』に主演で挑んだ奈緒さん。いくつもの世界が混在する物語の中でラストに届けたかったメッセージとは? 公演を終えたばかりのご本人に、舞台の思い出、作品の魅力についてお話をうかがいました。

奈緒さんは以前から倉持裕さんの作品のファンだったそうですが、どんなところに魅力を感じていらっしゃいますか?

「倉持さんって絶対に優しい方だと思うんです! その優しさが作品にもにじみ出ているように思います。この『DOORS』もそうですが、不器用な人が出てきても、絶対にいじわるな目線で描かれていないんですね。それどころか、観終わる頃にはその不器用さに愛おしさを感じていることが多くて。人間には弱い部分や、完璧ではないところがあるのは当然で、でもそれをプラスに思わせてくれるところが素敵だなと感じます。また、物語の展開の仕方もそれに少し似ていて。悲しさであったり、ネガティブな場面が長く続くことがなく、ちょっと気持ちが沈むシーンのあとは、すぐ笑顔にしてくれる。作品を通して伝えようとしているメッセージの深さと笑いのバランスがとてもよく、そのため最後まで心地よく楽しめるんです」

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では、実際に演出を受けてみての印象はいかがでしたか?

「作品同様、演出もとても優しかったです。どんな演技に対しても、ひと言めは必ず肯定から入ってくださるんです。また、私が表現方法で迷っていたりすると、『それなら、もう少し“悲しみ”に注目してみましょうか』といった感じで、直接的な答えは出さず、感情の運び方をわかりやすく誘導してくださって。感情の流れがわからない時も、『まず動きを変えてみると、気持ちが自然とついてくることもあるよ』と違うアプローチの仕方で演出してくださったり、今回の稽古場では本当にいろんなことを学ばせてもらいました」

ちなみに、倉持作品に出演される方からはよく、演出席でずっとポーカーフェイスでいる倉持さんに、最初は少し戸惑うという話を聞きますが……。

「確かにポーカーフェイスでした(笑)。でも、戸惑うことはなかったです。マスクで細かな表情までは読み取れませんでしたが、それでも優しい雰囲気をまとっていらっしゃったので、緊張を感じることもなくって。あ、ただ福岡公演の最終日に、マスクを外して笑っているお顔を拝見する瞬間があったんです! それがすごく嬉しくて。“倉持さんってこんな表情で笑うんだぁ”と、思わず隠し撮りで動画を撮りました(笑)」

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(笑)。『DOORS』は“そうであったはずの世界”と“こうなってしまった世界”を行き来する、ファンタジー要素の強い物語でした。公演を終えてみて、改めてどのような作品だったと感じていますか?

「この舞台は、主人公の真知が何事にも悲観的な母親に対して苛立ちを抱いているところから始まるため、いつもスタートのシーンでは、“私(真知)はいつか母親のことを受け入れられるようになるのだろうか?”という感情を作っていました。ただ、物語の中で、ある日突然、母親の中身が明るい人間に入れ替わってしまうという、とんでもないことが起きるんですね。そのことで真知の中にも普段とは違うギアが入り、同時に、母親に対する愛情や本当の気持ちが心の奥のほうからあふれ出てきて、少しずつ反発も薄れていくんです。そして最後には、ささやかだけど力強い一歩を踏み出し、救われた気持ちにもなる。こうした希望に満ちたラストは、今、世の中はいろんな大変なことがあって、“それでも生きていかないといけない”という思いにもリンクしているように感じました。また、舞台をご覧になった方からも、“少し強くなった最後の真知の姿が印象的だった”という言葉をたくさんいただいて。私が台本を読んだ時から“皆さんに届くといいな”と思っていたことが、しっかりと伝えられたのかなと感じています」

母親役の早霧せいなさんや、同級生・理々子役の伊藤万理華さんとの共演はいかがでしたか?

「早霧さんが演じた美津子さんは、母親になりきれていないという役でした。早霧さん自身、母親役を演じるのが初めてだったそうで、稽古前は不安にされていましたが、早霧さんが安心する空気を作って下さったので、稽古や本番を重ねていく中でどんどん役の関係性に変化が生まれていくことを楽しむことができました。公演中はどんどん親子としての絆も強まっていく感覚がありました。万理華ちゃんとの共演も刺激的でしたね。今回、私は主演を務めさせていただきましたが、物語の中で真知が成長していく隣にはいつも理々子がいてくれたように、私にとっては万理華ちゃんが支えになってくれていたように思います。それに、万理華ちゃんとはほぼ同年代で。お会いする前に彼女の乃木坂46時代の動画を観て、“こんなも素敵な女性がこの世の中にいたのか!”と感動と嫉妬を覚えたんです(笑)。でも、その感情は私にとってものすごくプラスのもので。万理華ちゃんと出会えたこと、共演できたことへの感謝の想いを、公演中に直接伝えられたのもいい思い出ですね」

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最後に、今回の放送に向けて楽しみにされていることを教えてください。

「劇中にクルマが出て来るシーンがあるのですが、共演者の皆さんといつも、“これってどういうふうに見えてるんだろうね?”って話していたんです(笑)。ですからそれを、今回の放送で客席側からの視点で見られるのが楽しみですね。また、少し前に自分が劇場で観劇した舞台を、のちに配信でも観たことがありまして。自分の席からは感じとれなかった役者さんの表情などもしっかり見えて、劇場とはまた違った面白さがあったんです。映像ではそうした新たな発見もありますので、この作品を劇場でご覧になった方も、ぜひ楽しみにしていただければと思います」

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▼プロフィール
Nao
1995年2月10日生まれ。福岡県出身。2018年、連続テレビ小説『半分、青い。』で一躍脚光を浴びる。その後もドラマ『あなたの番です』、『姉ちゃんの恋人』など話題作に出演。現在、WOWOWの『演じ屋』に出演中。また、映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(9月10日公開)、『君は永遠にそいつらより若い』(9月17日公開)、『マイ・ダディ』(9月23日公開)が控えている。
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取材・文:倉田モトキ
撮影:宮田浩史
ヘアメイク:竹下あゆみ
スタイリスト:岡本純子(アフェリア)
衣装協力:ハウス オブ ロータス
(ブラウス ¥31,900/パンツ ¥31,900 問合せ:ハウス オブ ロータス 青山店 Tel: 03-6447-0481)
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M&Oplaysプロデュース「DOORS」
CS衛星劇場にて、8月8日(日)午後4:15~6:30テレビ初放送!

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2021年
[作・演出]倉持裕
[出演]奈緒、伊藤万理華、菅原永二、今野浩喜、田村たがめ、早霧せいな

劇作家・演出家の倉持裕の約1年半ぶりとなる新作公演。真知と理々子、二人の対照的な少女が時空を超えて不思議な旅に出る…。主演の真知役に今最も旬な若手実力派女優・奈緒、一緒に旅をする理々子役に元乃木坂46のメンバー・伊藤万理華、物語の始まりのキーパーソン・真知の母親役に早霧せいな。そして、菅原永二、今野浩喜、田村たがめという個性的で賑やかなキャストが揃った。

小さな地方都市。高校生の真知は、元女優の母・美津子と二人暮らし。美津子は芸能界で挫折して、故郷の町に戻って来たのだが、そんな彼女を悪く言う者も多く、住人たちとたびたびトラブルを起こした。そうして次第に卑屈になる母親の言動は娘にも影響し、真知も高校で孤立している。クラスで目立つ存在の理々子は、何かと真知に絡んでくる。ところが、ある夜を境に状況は一変。突然、美津子が別人のように明るく社交的な人間になってしまう。「あれは、お母さんじゃない……」真知は、姿を消した「本当の美津子」を探すべく、町一番の変人を訪ね、そこであるヒントを得る。追いかけてきた理々子とともに、一枚の「ドア」の前に立つ真知。そのドアを開けたとき、思いもよらない世界が二人の前に現れる。“そうであったはずの世界”と“こうなってしまった世界”。二人がその不思議な旅の果てにたどり着いた先に見た、ささやかな希望とは――。

(2021年5月16日~5月30日 東京・世田谷パブリックシアター)

※宣伝写真・舞台写真のクレジット
撮影:渡部孝弘

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