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「日本舞踊を身近に感じてほしい」 【未来座SAI 大人のたしなみ講座~日本舞踊~】体験レポート 知れば知るほど面白い日本舞踊!! 

美しい着物をまとい、優雅に華麗に舞う日本舞踊。日本人なら誰しも憧れたことがあるのではないでしょうか。
けれども着物を着ることすら自分一人ではできないのが私たち、現代人。「日本舞踊は高嶺の花」「日常とは遠く離れた存在だ」と思っているのではないでしょうか。

そんな現実に一石を投じるべく、「日本舞踊を身近に感じてほしい」との願いを込めて、5月27日(土)に日本舞踊の巨匠達による特別講座が開催されました。
会場は明治座にほど近い鶏料理の老舗「玉ひで」。日本舞踊にぴったりの雰囲気ある部屋で『未来座SAI 大人のたしなみ講座~日本舞踊~』が開催されました。

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撮影:阿部章仁

講座の内容は・・・第一回日本舞踊未来座『賽=SAI=』で演出や振付を担当する日本舞踊の先生方が講師
1限目「美しい所作を!」(美しく歩く・座る・お辞儀)
2限目「日本舞踊を知ろう!」(日本舞踊の振り・動きの意味を学び・動いてみる」
3限目「実践!踊ってみる!」(新作の日本舞踊を踊ってみる)
と3段階で直接指導してくれるというもの。

どれか1講座だけ受けても、3講座全部受けてもOK.。
どの講座も定員は30名以下。日本舞踊の未経験者・初心者大歓迎!
毎講座の最後には「松本錦升(市川染五郎)が、目前で舞る!」というスペシャルなご褒美付き!
参加者には浴衣を無料で貸出し、着付けまでしてもらえるという至れり尽くせりな講座です。

これは市川染五郎ファンなら涙モノ! そうでなくても一生に幾度とない体験になること間違いなし!
この貴重なイベントの1限目と3限目にAstageの記者も参加させて頂きました。
思いがけない驚きに満ちた、楽しい日本舞踊体験をご報告します!

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講座当日に参加者が持参するのは、足袋か靴下のみ。
会場に到着後、準備されているたくさん浴衣の中から、好みの浴衣と帯を選んで着付けてもらって準備完了。記者が浴衣を着るのはうん十年ぶりです。帯は少々きつく感じますが、気持ちもぐっと引きしまりました。

【第一限講座】“日常生活の中にも活かすことの出来る美しい所作を!”
幅広い年代の参加者は、ほぼ全員が着物か浴衣姿。そして多くの方が日本舞踊は初体験。「何年ぶりに着物を着た」と言う方、「着物が着たくて参加した」という方、染五郎さんのファンの方、ほんの数日前まで上演されていた『氷艶HYOEN 2017―破沙羅』を観てというアイススケートファンの方…と、参加の動機もさまざま。男性も参加されていました。

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講師は大河ドラマ「おんな城主直虎」「真田丸」など、多くのドラマで所作指導を務めておられる橘芳慧先生。厳しいご指導をされるのかと思いきや、このイベントを「とても良い機会を頂いた」と喜んでおられて「やってみなくてはわからない。遊ぶと思ってやってみて」とリラックスして参加するように声掛けして下さいました。

「所作の基本は歩く、走る、お辞儀」とのことで、まずは歩くこと…自然に歩くことから講座はスタートしました。

参加者はずらりと並んでまっすぐに普通に歩きます。いつも歩いているにもかかわらず、美しく歩くのは案外難しい。左右どちらかに体が傾いていたり、前かがみ、猫背になっていたり、上半身が左右に揺れたりと、自分ではわからないクセがあるもの。
つむじを真上からひっぱられているような気持ちで背筋を伸ばし、下腹に力を入れ、両手は軽く握って自然に振ると美しく歩けるそうです。

橘芳慧先生はひとりひとりの歩き方を見て、肩や背に手を添えたり、顎の角度を指摘したり。アドバイスはピシャリとおっしゃるのですが、ユーモアたっぷりにお話しされるので、参加者のみなさんも縮こまることなく歩いておられました。
美しく歩く時の心構えは「自分を日本一きれいな女だと思って、自信をもって歩くこと」。性格や心の内までも歩き方にも現れるそうですよ。

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自然な歩きができるようになると、すり足へステップアップ。
手は指を揃えて、足の付け根にそっと添えたまま、小さい歩幅で歩きます。体は楽にして、しかし体を揺らさない。簡単なようですが、集中力が必要です。
「みなさん、美しい歩き方になっていきました。普段から意識して下さいね。意識すればきれいになります。あとは自信です」とのお言葉を頂いて、さらに上のステップ、座り方ときちんとしたお辞儀の仕方へ。

まず、参加者同士で向かい合って正座をします。正座の時には、右手の指先を軽く握った左手の下に隠して膝の上に置くのが正しいとのこと。(これは立っている時も同様に、下腹の前で左手を上に右手を下にして指先を隠すのが正しいそうです。)

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お辞儀の時には、親指を内側に折り4本の指を伸ばして手を床に着けます。手首は浮かさないように。
頭は一気に頭を下げずに、目八分といって相手の胸元あたりを見て一旦止まり、猫背にならないように背中を伸ばしたまま上半身を前に倒していきます。頭を上げるときも一気に上げきらずに、目八分で止まってから正座に戻ることがポイント。
橘芳慧先生はここでもひとりひとりに丁寧にアドバイスをくださいました。「お辞儀は相手を敬うから行う行為。その気持ちを大事にしましょう」と繰り返しおっしゃっていました。「おんな城主直虎」でもきちんと目八分をしているそうです。

最後は全員で「大奥でしずしずと歩いている気分」で歩き、スタッフを大名に見立ててお辞儀。時代劇に出演した気分で総ざらえをして講座は終了しました。

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講座の後は、いよいよお待ちかねの松本錦升さんの踊りの時間です。
錦升さんはズラリと並んだ参加者が手を伸ばせば触れそうなくらいの近さに立つと「所作を習ったばかりのみなさんの前で踊るという、これほどのプレッシャーは生まれて初めてです」と苦笑い。参加者も余りの近さにドキドキ。期待と緊張でカチコチとなって座っていると、錦升さんは「お手本でも先生でもないので、かしこまらずにご覧いただければ」とおっしゃって「義太夫の三番叟」を披露くださいました。
「日常生活では着物を着ることもなかなか無いとは思いますが、日本舞踊を体験して頂くことで日常生活に刺激となり、また別世界にお連れすることができると思います」という錦升さんのお言葉どおり、優雅でありながら力強さを感じさせる舞に、一同釘づけに。至福の時間を頂きました。

この後、【第二限講座】“日本舞踊を知ろう!” という日本舞踊の振り付けの意味などを学ぶ中村梅彌先生の講座の時間に、Astageは錦升さんにインタビューをさせて頂きました。
市川染五郎(松本錦升)インタビューはこちらから!!

日本舞踊について知っていることは第一限で習った所作の初歩だけにもかかわらず、その面白さに目覚めたAstage記者。日本舞踊を踊ってみる【第三限講座】にも参加しました。

【第三限講座】 “6月開催の未来座『賽=SAI=』の演目を踊ってみる!”
6月に開催される第一回日本舞踊 未来座『賽=SAI=』公演の演目のひとつ『当世うき夜猫』の一部を実際に踊ってみるという講座です。講師はこの演目の演出を担当される花柳流花柳会理事 花柳輔太朗先生です。

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参加者は1限目から3講座を連続で受けている方、「日本舞踊は初めて」という方、粋に着物を着こなしておられる若い男性も数名おられました。1限目に比べると浴衣の人数が減り、着物姿の方が増えたのは、日本舞踊の経験者が増えたということでしょう。

花柳輔太朗先生によれば、「これからお稽古する『当世うき夜猫』で演じるのは猫。猫になりきって踊ります。日本舞踊からはちょっと離れた激しい動きもあります」とのこと。「日本舞踊版『キャッツ』かな?」と想像しました。

怪我予防のためにストレッチから講座開始。アキレス腱を伸ばした後は軽くジャンプします。その次の運動では、準備運動にもかかわらず、ギブアップする人が続出しました。
片足を一歩前に出し、手を足の付け根に添えて、上半身を真っ直ぐ立てたまま腰を5㎝ずつ4~5回に分けて沈め、また上げていく運動です。花柳輔太朗先生は「日本舞踊しか使わない筋肉かもしれません」とおっしゃっておられましたが、前太ももへの負荷がとてもキツイく、ブルブル震えました。(なんと翌日はひどい筋肉痛になりました。)

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そして振付をゆっくりと教えて頂きます。
猫らしくみせるポイントの1つは、こぶしに握った手を手首から柔らかく回すしぐさ。顔の前で手を舐める時には、顎を動かすと、より可愛く見える…というアドバイスを聞いてから、お手本を拝見しました。

その踊りはリズミカルな音楽に合わせて素早くクルリとまわったり、跳んだり蹴ったり。スピード感に満ち、着物姿でなければ、日本舞踊だと聞いていなければ、コンテンポラリーダンスだと思ったかもしれません。「これも日本舞踊?!」とびっくりしました。

さて、いよいよ実践です。
ひとつひとつの振り付けを丁寧に教えて頂きながら、見よう見まねで踊り開始。お手本を見ると流れるような優雅な動きですが、自分がやってみると、低い体勢からサッと立ち上がったり、片足でバランスをとったり、すばやく動いたりとハード。これほど体力が必要だとは思いもしませんでした。

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全編で40秒足らずの踊りでしたが、たっぷり1時間をかけて何度もゆっくりと繰り返して教えて頂くうちに、「日本舞踊は初めて」とおっしゃっていた参加者が多かったにもかかわらず、最後にはほとんどの方が完璧に振付を覚えて、スムーズに可愛く踊っておられました。その額には汗がキラリ。お手本を踊ってくださっていたみなさんも、終わった時には汗だくになっておられて、優雅に見える日本舞踊が、実はとてもハードな運動であることを実感し、驚きました。

この振付が6月開催の未来座『賽=SAI=』の舞台でも上演されるとのこと。
どのような演出・照明で、どんな衣装で演じられるのか。たくさんの猫役が出演されるようなので、とても楽しみになりました。

とはいえ、実は子供の頃に盆踊りしかしたことがない記者は、振付を覚えるどころか、右手が上る時には左足が上るという簡単なことすらできず、毎度右手右足が同時に上ってしまい、悪戦苦闘。終わり際には、冷や汗もじっとり、太ももがパンパンに。
ただ、できないなりに踊ることは楽しくて、終わってみると気持ちも晴れ晴れ。軽い疲労感も心地よく感じました。筋力や体幹を鍛えるだけでなく、精神的な効果も大きいように感じて驚きました。

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講座の締めくくりに、松本錦升さんが登場。「みなさん、かなり汗をかいておられますね。日本舞踊は体幹を使い、美容にもとても良いので、是非続けて頂きたいです」の言葉に説得力を感じました。

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松本錦升さんが披露して下さったのは「人前で踊るのは初めて」という「いざや カブかん!」歌舞伎体操
元は子供たちに歌舞伎に親しんでもらいたいとつくった体操だったようで、歌舞伎の基本的な動きがノリノリの音楽にのって次々に展開します。ただ、ご披露頂いたのは体操というイメージではなく、「大人の講座」に相応しい流れるように優雅で美しい踊り。その中で強いアクセントとなっていた見得を切る姿は本当にかっこよく、かけ声をかけたくなりました。

最後は参加されたみなさんと花柳輔太朗先生、松本錦升さんと一緒に記念撮影。何から何まで、非常に貴重な体験であり、よき思い出となりました。

実はその日以来、テレビで着物姿を見つけると「あら、右手が左手の上にあるわ」などと厳しくチェックをしています。時代劇を観るのが、いっそう楽しくなりました。
そして何より、日本舞踊は別世界にあるものではなく「自分でも楽しめるものなのかもしれない」と感じたことは、大きな変化でした。
ここから「日本舞踊を習おう」と踏み出すまでには、まだ少しハードルが高い気がしていますが、日本舞踊の生み出す空気を味わいたいと、 第一回日本舞踊未来座『賽=SAI=』の公演を楽しみに待っています。

未来座=賽=宣伝ヴィジュアル

『未来座SAI 大人のたしなみ講座~日本舞踊~』イベント概要
◆日時:2017年5月27日(土)
【第一限講座】“美しい所作を!”講師:橘芳慧13:30~15:00(12:45~受付)
大河ドラマ「おんな城主直虎」でも所作指導を務める橘流家元橘芳慧先生による日本舞踊の基本的な所作を身に付けよう!
日常生活の中にも活かすことの出来る美しい所作を、日本舞踊の所作から学びましょう。

【第二限講座】“日本舞踊を知ろう!”講師:中村梅彌16:00~17:30(15:15~受付)
中村流家元中村梅彌先生に日本舞踊の振りや動きの意味を教えて頂きながら、実際に曲を使って動いてみよう!
【第三限講座】“実践!踊ってみる!”講師:花柳輔太朗18:30~20:00(17:45~受付)
花柳流花柳会理事花柳輔太朗先生に6月に開催される第一回日本舞踊未来座『賽=SAI=』公演の演目のひとつ『当世うき夜猫』の振付を教えて頂き、実際に舞ってみよう!
※各講座内に10分程度の松本錦升(市川染五郎)先生による舞踊披露!
◆会場:玉ひで3階「吉祥の間」 東京都中央区日本橋人形町1-17-10
【アクセス】地下鉄日比谷線人形町駅徒歩1分、地下鉄半蔵門線水天宮駅徒歩2分

【公演概要】
◆公演名:第一回日本舞踊未来座『賽 SAI』
◆演目名:「水ものがたり」「女人角田~たゆたふ~」「当世うき夜猫」「擽〜くすぐり〜」
◆日程:平成29年6月15日(木)~6月18日(日)※開場は開演30分前
6月15日(木)14:30/18:30
6月16日(金)14:30/18:30
6月17日(土)11:00/15:00/19:00
6月18日(日)13:00/17:00
◆会場:国立劇場小劇場(東京都千代田区隼町4-1 03-3265-7411)
◆チケット料金:全席指定 7,000円(税込)
◆各種割引:障害者割引 5,600円(税込)
※お申し込みは協会事務局まで(電話03-3533-6455  info@nihonbuyou.or.jp)
◆チケット取扱:日本舞踊協会WEB特別受付 http://w.pia.jp/p/miraiza-sai17sp/ (24時間)
◆主催・お問い合わせ:公益社団法人 日本舞踊協会
電話:03-3533-6455(平日10:00~17:00)
メールアドレス:info@nihonbuyou.or.jp
ホームページ:www.nihonbuyou.or.jp

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