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闇に広がる恐怖・・・森 新太郎演出『怪談 牡丹燈籠』ゲネプロ レポート

猛暑が続く夏に相応しい、『怪談 牡丹燈籠』が7月14日(金)に幕を開けた。
初日前夜に公開したゲネプロをお届けする。

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本作は「惚れた男に恋い焦がれて死んだ娘が、死してなお、夜な夜な恋しい男のもとに通う。娘の前を歩く女中の手元には揺れる提灯・・・」という中国から伝わったといわれる有名な幽霊話をもとに、三遊亭圓朝が江戸風物と仇討・殺人・不義密通に人間の深い欲を絡めて生み出した落語が原作。
演出の森新太郎が現在にも江戸にも思える・・・迫りくる怪談を描き出した。

まず、幕が開くと、舞台セットに驚かされた。
本番1週間前のインタビューで「舞台上に“ブツ”(セット)がある」とは聞いていた。その前日に稽古場に運びこまれたこの“ブツ”のせいで「これまでの芝居を半分くらい壊した」(森 談)と聞いていたのだ。

“ブツ”のせいでそれまでの芝居が半分くらい壊れたのも当然のことに思われた。いや、逆に、“ブツ”が置かれてからわずか1週間で、絶妙に“ブツ”を使いこなしたスタッフとキャスト驚かされる。この秘密兵器ともいえるセットを繊細に大胆に使いこなしたのおかげで、これだけ膨大な内容の話を一気にストンと観客の心に落とし込むことができたのだろう。驚きの発想を楽しみに劇場を訪ねて頂きたい。

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さて、物語はかの有名な幽霊話から始まる。
このあたりはストーリーは知っての上で、「こうくるか」「ああくるか」「そうきたか!」と楽しませてくれる場面といえよう。

まずは台詞のリズムが楽しい。落語生まれの台詞が生み出すリズムについて、森が「圓朝の文体には現代語にない、俳優が自然とノッてくる、肉躍るリズムがある」と語っていたが、これは観客もクセになる、心躍るリズムだった。
しかも、達者な役者の口にかかると、「待ってました!」と声を上げたくなるような爽快感と、時にどうにもこらえきれないほどの笑いも湧いてくる。

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実の娘以上に大切に育てたお嬢様に死なれ、自ら後を追うように死んだ女中(松金よね子)のお嬢様への思いの深さ、毎夜通ってくる娘が死人だと知った時の男(柳下大)の驚愕、恋に狂ったお嬢様(川嶋由莉)のリアルさ…そして、欲にかられた夫婦(山本亨、松本紀保)の算段。見どころが続く。

衣装がまた良い。特に女性たちの衣装の裾がセットの“ブツ”とあいまって、その人物の思いを表すかのような動きを見せる。

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やがて、ゆっくりと本物の恐怖が迫ってくる。  圓朝の手による日本生まれのサブストーリーが複雑に展開し、迫る闇が客席にも広がってくる。その闇に絡みとられるのは、誰なのか…。一気に見せる2時間。お見逃しなく。

公演は7月30日(日)まで、すみだパークスタジオ倉にて。

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オフィス コットーネプロデュース
「怪談 牡丹燈籠」
原作: 三遊亭円朝   脚本: フジノサツコ
演出: 森新太郎   プロデューサー: 綿貫凜
出演:柳下大 / 山本亨 / 西尾友樹 / 松本紀保 / 太田緑ロランス / 青山勝 / 松金よね子 / 花王おさむ / 児玉貴志 / 原口健太郎 / 宮島健 / 川嶋由莉 / 新上貴美 / 井下宜久 / 升田 茂

公演期間 2017年7月14日 (金) ~2017年7月30日 (日)
会場 すみだパークスタジオ倉
公式HP http://www5d.biglobe.ne.jp/~cottone/botandourou/
チケット 一般 前売:5,500円 当日:5,800円
シードチケット(25歳以下)前売・当日共:4000円
墨田区民割引 前売のみ:5300円 (全席指定・税込)

<カンフェティ取扱チケット>
一般 前売:5,500円 (全席指定・税込)