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小栗 旬×横田栄司×吉田鋼太郎 インタビュー 彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾『ジョン王』

小栗 旬×横田栄司×吉田鋼太郎 インタビュー 彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾『ジョン王』
小栗 旬「鋼太郎さんの脳みその中を覗ける。どれだけ吸い尽くせるか、楽しみです」
横田栄司「こんなに面白い芝居だったの?!」ということになるはず。
吉田鋼太郎「これからのことを考えると、このふたりに頑張ってもらわなきゃいけない」

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横田栄司   小栗旬  吉田鋼太郎

1998年にスタートし、蜷川幸雄から吉田鋼太郎へと引き継がれてきた彩の国シェイクスピア・シリーズ。その第36弾として歴史劇『ジョン王』が2020年6月に上演される。

シリーズ2代目芸術監督・演出の吉田鋼太郎は、主人公として先王の私生児フィリップ役に小栗旬を、ジョン王役に横田栄司を迎えて、英国史上最も悪評の高い王とも言われるジョンの治世を、どのように描くのか?

小栗旬、横田栄司、そして演出と共に自身もフランス王を演じる吉田鋼太郎が揃ってインタビューに応じてくれた。

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―『ジョン王』という作品について、お聞かせ下さい。
吉田:シェイクスピアの作品は喜劇・悲劇・歴史劇、そして無理やりな感じはありますが問題劇とジャンル分けされていて、『ジョン王』と『ハムレット』はときどき問題劇に入れられることがあります。それだけ変わった芝居ではあると思います。
面白いのは、あくまでもシェイクスピアがある意図を持って書いているように思えてしょうがない点。それは蜷川幸雄さんが残していった『アテネのタイモン』『ヘンリー五世』『ヘンリー八世』『ジョン王』『終わりよければすべてよし』のどれも、ちょっと寓話的な特徴も読み取れます。

―先王の私生児のフィリップを主人公にしたことについては?
吉田:敵対するイングランドとフランスの間に私生児がいます。彼はもちろんイギリス側だけれど、自分の主君(ジョン王)も批判するし、フランス側を褒めたりもする。2つの権力に対して批判的な目を持つことができる。でも皮肉なことに彼はその血筋ではない。シェイクスピアは「何も無い者が批評眼を持てるのではないか」と書いている気がします。
歴史は英雄がいて動かしてきたわけでは決してない、必ずその裏に根底に庶民がいる。そのあたりが混在している芝居として描ければ面白くなるのかな…と思っています。

―エンターテイメントとして、どう見せますか?
吉田:まだ先なので、はっきりとは…。ただ『ヘンリー五世』は立ち回り(殺陣)を重視しましたが、歴史劇イコール立ち回りではなく、今回、殺陣は必要ではないような気がしています。それよりも英仏それぞれの心理や、真ん中にいる私生児がどういう心理状態でけしかけたり止めようとしたりしているのか。どちらかというと心理合戦のような気がするので、立ち回りでワーッとやるのも大事だけれど、それと正反対の心理劇的なところを押し出したら面白くなると思っています。
ビジュアル的にも、今日は素敵な衣装を準備して頂いて、照明や装置や衣装で遊びみたいなことができそうな気がしています。この時代の衣装はこう…ではなくて「いつの時代にもこういうことはありますよ」と時代を超えた普遍的な芝居になるのではないかと思います。
『ヘンリー五世』はイギリス人たちの英雄で、史実から逸脱するわけにはいかないところがある。ジョン王も実在したけど、マグナカルタを書いた人として知られているだけで、あまり知られていないようなので、少し飛躍できるかなと考えています。

―では、キャスティンググについて、お願いします。
吉田:フィリップは肉体的にも精神的にも非常にパワーがある人間です。英仏を行ったり来たりしながら戦い、誰かを護りながら誰かを殺していく。批評だけする薄っぺらな人間ではない。自分の肉体をもって渦中に飛び込んでいける人物で、非常にパワーの要る役です。一度、僕も演じたことがありますが、大変でした。今、海外で肉体的にも精神的にも鍛えられている小栗くんにまさにピッタリだと思います。
小栗くんが、蜷川組を継承する彩の国シェイクスピア・シリーズに帰って来てくれるのは、ものすごく嬉しいです。
横田さんは僕がもっとも信頼する俳優で、シェイクスピアについては彼がいれば僕は安心てして演出ができます。今回は彼がタイトルロールのジョン王を演じます。『ジュリアス・シーザー』で蜷川さんがタイトルロールを彼に演じさせたのですが、タイトルロールというのは名ばかりでほとんど出てこないで途中で死んでしまう。(爆笑) 今度こそタイトルロールをと思うのですが、ジョン王もなかなかタイトルロールらしくないんです。(笑)そこを演技力でジョン王という役をどう構築するのか、楽しみで横田さんにお願いしました。

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―それを受けて、いかがですか?
小栗:11年ぶりに蜷川組に帰ってくる…。
吉田:長かったねぇ~。
小栗:長かったですね。(笑)
吉田:蜷川さんが亡くなる前に「ハムレットをやろう」と話をしていたから、小栗くんもそれは残念だと思います。
小栗:それをやっているか、やってないかで、僕の演劇人生が変わっていたと思いますが、こうして戻ってこられるのは、非常に感慨深いです。今の話を聞いて、鋼太郎さんがそういうところで自分を求めてくれたのは、光栄で楽しみです。私生児はある種の正論をもって行ったり来たりするけど、ジョン王はまわりに振り回されて行ったり来たり…。
吉田:ひどいよね~。(笑)
横田:そういう小さい男をスケール大きく…
小栗:演じさせたら右に出るものはいない…?(一同爆笑)
横田:もちろん呼んで頂けたのは嬉しいし、今度は旬も一緒で嬉しいです。シェイクスピアを一緒にやるのは『タイタス・アンドロニカス』(2006年イギリス公演)以来。ストラットフォードに行った…、あの頃は鋼太郎さんを筆頭に僕らもまだ若かった。
小栗:あの頃の横田さんは、今の僕より若かったですよね。
横田:そんなことを思い出しながら、蜷川さんの意志を鋼太郎さんを通して引き継ぎながら、このシリーズに出演できるのは本当に一番の喜びです。大ファンなので命懸けでスケール大きく、中身は小さく(笑)、目指してやっていきたいと思います。
『アテネのタイモン』や『ヘンリー五世』をご覧になった方にはわかって頂けると思いますが、こういうマイナーなシェイクスピアの芝居こそ、鋼太郎さんのシェイクスピアへの造詣や理解度が発揮されて、「こんなに面白い芝居だったの?!」ということになるはずです。僕はそれを信じているし、お客さまにもそれを信じて劇場に足を運んで頂きたいと思っています。

―3人の共演は楽しみですね。
小栗:僕はずっと一緒にやりたかったので、ものすごく嬉しいです。鋼太郎さん、横田さん、竜也はいろんなところで一緒に出演していますが、それを見る度に「俺はもう、あそこには入れないのか」と思って過ごしてきたので。(笑) 純粋に入れるのが嬉しいです。
横田:芝居を観終わると、俺たちの楽屋で必ずやさぐれていたから「羨ましいんじゃないかな」と。(笑)
小栗:まさにそうです。僕はいろんなところで“演劇論をぶつ人”と言われていますが、そんなことはない。でもこの人たちとは演劇の話になります。先輩たちが通ってきた時間をいろいろと話してくれて、ある意味それを体験できる。
最近、皆の出演する舞台を観に行って、その後酒を飲みに行っても皆が語っているシーンには入れずやさぐれていました。今度は、その中に自分も入って共通認識をもって話せるのは嬉しいです。
吉田:『ヘンリー五世』の後、楽屋で小栗が浮かない顔をしていたのでつまらなかったのかと思ったら「おもしろかったのですが、俺、今度できるかな」と心配していた。「あんなに声出るかな」「あんなにシェイクスピアの台詞しゃべれるかな」と。しばらく離れていると不安になるみたいで浮かない顔をしていたね。まちがいなくその筋肉は衰えているので、急ピッチでグレードアップしてもらいましょう。そして、言いたくないんですけれど、今、こうして3人でいるだけでものすごく嬉しい。(爆笑)
横田:楽しみですが、一抹の恐怖が。どこまでがんばらなきゃいけないのか。ご存じのように2人は強大です。そして大スターです。そこに勇気と知恵と工夫で立ち向かっていく気分です。
小栗:違う見方で言うと、僕はお二人を本当にリスペクトしていますが、ただ仲良くお酒を飲んで、仲良くやりたい芝居をしているといううがった見方をする人達もいると思います。僕は23才で『タイタス・アンドロニカス』のイギリス公演ですごい体験をさせてもらって、勝手にお二人を戦友だと思っています。あれほど興奮する時間は、その後なかなか無いまま生きているので、それを味わっている人たちと同じチャレンジができるのは、自分にとっては非常に有難いです。

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―小栗さんは鋼太郎さんの稽古場は見学に行ったことがあるそうですが、出演経験のある横田さんから見て鋼太郎さんの稽古場の面白さは?
横田:鋼太郎さんは蜷川さんの演出の手法ではなくてソウル…魂みたいなものが似ています。すごいものを作りながら若い人を導いたり教育したりと2つの事をされていると思います。そこにこちらも学びがある。言葉のチョイスが面白い、必ず爆笑させてくれる。「こうやって育てたら、若い人は育つな」というのもありますし、もちろん作品の解釈や役への深め方も俳優として有難いです。
蜷川さんは蜷川さんとして素晴らしかったですが、鋼太郎さんは当代随一の俳優として「俺だったらこう演じる」と教えてくれるわけです。同業者として、なかなか味わえない体験です。毎回毎回得している気分です。

―小栗さんの鋼太郎さん演出への楽しみは?
小栗:まさに今横田さんがおっしゃったことがあると思います。やっぱりわずか三ヶ月ぐらいですけど、鋼太郎さんの脳みその中を覗ける。どれだけ吸い尽くせるか、楽しみです。(笑)

―鋼太郎さんからふたりへの期待は?
吉田:演出がどんなに説明をしようと、できない人はできない。でも2人は演出がある程度説明したことを百倍千倍にしてくれるので、それが何より有難い。できればそういう俳優たちだけでやりたい。でもそれはなかなか難しい。
シェイクスピアでは、言葉の壁があります。テレビドラマに比べれば千倍位の台詞があり、それをひと言も逃さず観客に届けなきゃいけないという第一段階の作業。そこにその人の個性も、生きてきた人生ものせなきゃいけない、その人しかしゃべれない台詞を言わなきゃいけない。やることは山積みですが、このふたりはそれができるとわかっているので、演出家としてこんなに有難いことはない。僕が指導するといいますが、俳優としてそれを体現してくれる横田や小栗を見て若い人達が学んでいくということが起きていくと思う。これからのことを考えると、このふたりに頑張ってもらわなきゃいけないなと思っています。

彩の国シェイクスピア・シリーズ第36弾『ジョン王』
<キャスト・スタッフ>
=キャスト=
小栗旬 横田栄司
中村京蔵 玉置玲央 白石隼也 植本純米
間宮啓行 廣田高志  塚本幸男  飯田邦博  二反田雅澄 菊田大輔 水口てつ 鈴木彰紀*  竪山隼太*  堀 源起*  阿部丈二 山本直寛 續木淳平*  大西達之介 坂口舜 佐田 照/心瑛(Wキャスト)
吉田鋼太郎
*=さいたまネクスト・シアター

=スタッフ=
作 :W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:吉田鋼太郎 (彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)

<埼玉公演>
期間:2020年6月8日(月)~6月28日(日)
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
制作:(公財)埼玉県芸術文化振興財団/ホリプロ
企画:彩の国さいたま芸術劇場シェイクスピア企画委員会
お問い合わせ:彩の国さいたま芸術劇場
TEL:0570-064-939(休館日を除く10:00-19:00)

公演詳細
https://www.saf.or.jp
https://horipro-stage.jp/stage/kingjohn2019/
作品公式Twitter https://twitter.com/Shakespeare_sss

<名古屋公演>
期間:2020年7月3日(金)~7月6日(月)
会場:御園座
主催:御園座
お問い合わせ:御園座
TEL:052-222-8222(10:00~18:00)

<大阪公演>
期間:2020年7月10日(金)~7月20日(月)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
主催:梅田芸術劇場
お問い合わせ:梅田芸術劇場
TEL:06-6377-3888(10:00~18:00)