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「KERA CROSS」の第一弾『フローズン•ビーチ』の製作発表

018年に紫綬褒章を受賞、2019年に第26回 読売演劇大賞 最優秀作品賞・優秀演出家賞を受賞し、高く評価されている劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)の戯曲の中から、選りすぐりの名作を、才気溢れる演出家の手で新たに創り上げる、シアタークリエ連続上演シリーズ「KERA CROSS」の第一弾『フローズン•ビーチ』の製作発表が、5月13日(月)に行われた。

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KERA 鈴木杏  ブルゾンちえみ  朝倉あき  シルビア・グラブ  鈴木裕美

KERAはもちろん、この演出を手掛ける鈴木裕美と出演する4人の女優、鈴木杏、ブルゾンちえみ、朝倉あき、シルビア・グラブが登壇。
数日前に決定したばかりという配役、一卵性双生児の愛役と萌役を朝倉あき、愛の幼なじみの千津役を鈴木杏、千津の友人の陽気で癇癪持ちの市子をブルゾンちえみ、双子の義母・咲恵をシルビア・グラブも発表された。

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ーご挨拶をお願いします。
 KERA:まだどのくらいのペースで上演するのか、わかりませんが旧作をいろいろな演出家がやってくれるという企画らしいです。夏には4本の作品を誰が演出するのか、発表になると聞いています。誰が演出するのか、ドキドキします。1本目は、80年代の自転車筋クリート時代からとても信頼している鈴木裕美さんに、自分にとっても初めての賞、岸田戯曲賞を頂いた記念となる作品です。女性4人だけの芝居です。1980年代の初演から21年。最後に上演したのは2003年です。初演時も再演時も未来のこととして書いていましたが、それが今となっては随分昔になってしまいました。だいぶ見え方も変わると思いますが、演劇の上演というのはいろいろあって、唐(十郎)さんのお芝居を、学生紛争などを今ながめる面白さがあると思います。時事ネタみたいなものは、書いた時の意味では笑えないと思いますが、「上演されたときには、こういうことで笑っていたんだな」という意味で笑ってもらってもいいですし、自分でもどうなるか、観客として楽しみたいと思います。楽しみにしています。

鈴木裕美:KERAさんとは長いお付き合いで、何十本見たかわからない…たくさん拝見していますが、その度ごとに「KERAさんの脚本は、KERAさんが演出するのが一番だ」と度々申しております。その時同席していた方たちが「あいつ(鈴木)どうした?」と思っていると思います。(笑)「『フローズン•ビーチ』を演出してみないか」とお話を頂いて、その魅力にころんだというわけです。KERAさんが演出するのがやるのが一番面白いのではないかと思っているところもあるのですが、脚本が面白いので、私がやっても面白いという気持ちに切り替えています。集まってくださった俳優のみなさんもいろいろな意味で絶妙な・奇妙な取り合わせになっていると思いますので、この4人・・・6人で見られる景色がみたいと思っています。

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鈴木杏(千津役):まさか自分が『フローズン・ビーチ』の世界に入る日が来るとは思ってもみなかったので、すごく不思議な気持ちです。オリジナルキャストの女優のみなさんが大好きで尊敬してやまない方たちです。あこがれた方たちがやった伝説的な作品だと思っているので、光栄であると同時に大きな挑戦だと思っています。手を伸ばしても届かないほどすごい方々なので、この座組みで新たに発見できることがたくさんあったらいいなと思っています。台本が今は部屋にあって、読めば読むほど途方もない気持ちになるので、この気持ちを稽古まで抱えていると泣き出しそうになるので、この気持ちを早く稽古で皆さんと共有したいと思っています。この作品でしか出会えない4人だと思うので、とことん苦しんで、とことん楽しんで私たちに見える『フローズン・ビーチ』の世界を探していきたいと思っています。どんな世界になるのか、目撃してもらえたら幸いです。

ブルゾン・ちえみ(市子役):今回が初舞台で、このお話をいただけて、シンプルに嬉しい、ワクワクする気持ちが最初にきました。でも話を聞けば聞くほど、知れば知るほど、「私でよかったのか?」と、生まれたてのあかちゃんに高級料理を食べさせるような、この有難味がわかるのかと、贅沢な初舞台で、贅沢な環境にいさせてもらっていると感じました。考えれば考えるほど至らないところばかりなので、逆に知らない分、何も知らないままでぶつかっていこうと気持ちでワクワク、しがみついていこうと思っています。出演が決まった時に「作品のファンなので、楽しみです」と声を掛けられることが多かったので、期待に応えようという気持ちになっています。楽しみに劇場に見に来て下さい。

朝倉あき(愛、萌役):今日も朝からみなさんと一緒に取材と記者会見をするんだと胸が張り裂けそうです。お話を頂いて、嬉しく楽しみな気持ちでいっぱいになりました。舞台をやりたい気持ちがずっとあったので、その気持ちが爆発できるぞとワクワクしていましたが、お話を聞くうちにとんでもないことになってしまった…という気持ちになりました。私自身が立ち向かっていけるのか、という不安が大きくなりましたが、読み合わせをすると、自分が何をしたいか、何ができるかよくわかり、冷静な気持ちになりました。自分自身を見つけて、何度も恥をかいて、その中から自分の中で見つけるものがたくさんあるんだろうし、そうしかできないと思い始め、一巡して楽しみな気持ちでいっぱいになりました。魅力的な作品で、みなさんの想像を超えるものができるのではないかと確信しております。同時に、みなさんがとにかく面白いと思って頂けるように全てを賭けてやっていきたいと思っております。

シルビア・グラブ(咲恵):今回はお仕事を一緒にさせて頂くのが、全員が初めてです。この年になると、全員知らないという現場は少なくなって、今、とても緊張しているんです。(笑)そして、ミュージカル出演が多い中、今回は・・・ない! OK!がんばって日本語しゃべるぞ!と思いながら、今緊張しかありません。いくつになっても挑戦の場があることがとても嬉しくなって、与えられたことがとても幸せです。壁にぶち当たっていきたいと思っています。これほどバラバラなタイプの女優が集まることもないと思います。しかも4人しか出演しない。女性ばかりの作品がなかなか無いと思うので、よろしくお願い致します。

―「KERA CROSS」という企画について教えて下さい。
KERA:「KERA CROSS」は僕の作品を、東宝さんとキューブさんの製作で不定期にいろいろな演出家とやる。僕が望んでいるのは、今まである程度大きな規模の公演で僕の脚本をやりたいとリクエストを頂いたことはありますが、知らない方に委ねるのは嫌だと思って断ってきたのですが、信頼の出来る人となら楽しいのかもしれないなと、そう思える年になったのかもしれませんが、そういう企画です。基本的にすべてお任せして、現場もできるかぎりお任せしたい。何もしないことは苦痛ではありますが、いざやると、チラシから全部口出しをしていまうので、なるべく傍観者でいたいです。

―「フローズン・ビーチ」を書いたときのことを教えて下さい。
 KEARA:何を思っていたのかは、皆目覚えていません。出演者に犬山犬子、峯村リエ、松永玲子、今江冬子でした。取材で犬山が「これで岸田戯曲賞をとるといいな」と言ったので「すごく嫌なことを言うな」と思ったらとれたのです。他には…「自転車泥棒」という映画があります。散文的に始まってポエティックに終わります。全編が散文的、ポエティックというのはありましたが、散文的に始まってポエティックに終わるというのを書きたかった。そのために3幕目を将来にしました。でもそれ以来、その手法が自分のスタイルになって、散文的に始まってファンタジックに終わるものを自分のスタイルとして身につけるための1本目だったような気がします。

―戯曲・作品としての魅力は?
鈴木裕美:私は脚本を自分の世界に引き寄せるよりも、その世界にお邪魔する方が好きなので、これをこう演出してやるのだ・・みたいなことは思っていません。この作品ではある種、みんなが殺し合う…殺し合いと、非常にファンタジーな部分、リアルとファンタジーのバランスが、本作だけでなくKERAさんの作品は面白いなと思って好きなので、楽しんでやりたいと思っています。
「昔、昔あるところに四人の女がいました」というようなお話がすごく好きです。お話を聞きたいというような…。お客様にもこのお話をお伝えしたいし、KERAさんの世界に上手にお招きできればと思っています。

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―本読みを経て配役が決まったそうですね。
鈴木裕美:出演依頼の時に配役をまったく考えなかったわけではなく、プロデューサーはイメージはあってお願いしていましたが、ブルゾンさんやあきさんは舞台の声は聴いたことがなかったり、声が混じるとどんな風になるのか、わからなかったので、わがままを言って読み合わせをお願いしました。そして、この2人の関係性、この2人の関係性、こう組んだ方がよさそうだ…ということで決めましたが、多分4人ともが(配役が決まって)「これがいいな」と思っただろうと思います。ノリを摺合せたことで決まりました。

―配役が決まっての感想をお願いします。
鈴木杏:仲がいいのもありますし、どうしても(オリジナル・キャストの)峯村さん…と思ってしまいます。こないだ松永さんから「台本が長くて、自分たちからカット案をKERAさんに提示した」というお話を聞きまして…
KERA:「カット案あったら(出して)」と言ったら、ものすごくたくさん来たんだ。(笑)
鈴木杏:初演の時のお話をきいて面白かったです。千津は一見強いように見えてるのですが、実はとても弱い人で、誰かに支えてもらわないとへたり込んでしまうのかなと今は思っています。でも、そこが人間らしいですし、等身大の女の子があり、魅力的な部分でもあり。本読みの時からブルゾンさん演じる市子に振り回されて顔が真っ赤になるくらいでしたが、振り回されるのも存分に楽しみたいなと思っています。

ブルゾン・ちえみ:初演を映像で見た時には「市子さんは大変そう。難易度がすごく高そうだ」と。それは私の素からもネタの部分からも市子さんは遠い感じがして難しそうだと思いましたが、読み合わせをしたときに『楽しい!』と思えました。私はいろいろな投げ方をしても、千津役の杏さんが捕ってくれるのがちょっと楽しかったなと。これが舞台でできたら楽しいのかなと期待が生まれました。それまでは不安が大きかったのですが、もっとワクワク楽しくできるようにがんばっていきたいなと思いました。

朝倉あき:どうなるのだろう…というところから、4人全員面白いから、どれも楽しめるかもしれない。逆にどれも差がつかないかも知れない…とたくさん考えていました。本読みをやってみると、愛・萌はどこかずれているところがありますが、中では比較的マトモな感じがして、でも難しい感じがしておもしろそうだと思いました。私が感じた部分を、愛・萌の魅力として、どのように成長させていくか、楽しみにしています。

シルビア・グラブ:この段階で本読みはムリだと思いましたが、みなさんが読むのを聞くと、とても面白く楽しかったです。たまに、現場に行ってから「こっちの役の方がよかったのにな」と思うケースもあったのですが、今回はそれを回避するためにやったのが、とても面白かったし勉強になりました。
結果、関係性がペアとしてだれの声が合うのか、空気感が合うのかをとても納得した上で今ここにいます。私の場合は年齢的に咲恵役しかなかったのですが…若い義理の母親ですが(笑)…あれができたことが私にとって勉強になり、稽古に入るときの不安が和らいだのでありがたかったです。
キャラクターとしては一番楽観的な役柄だと思うので、その空気感を作りたいと思います。

KERA:脚本を書いた時はあて書きでしたので、クセも含め、彼女がこうしたらいいだろうな、こうしたら意外だろうなと。上演してから10年位した時にワークショップのテキストとして使った時に、生徒たちは狙った言い方はしてくれないのですが、これはこれで面白いなと思いました。当て書きしてしまっているので、演出家としての自分は作家としての自分を抜け切れないのですが、それを終えて別のモードになると、そんなことはどうでもよくなって、犬山や峯村ではこんなトーンはでないようなところがみえました。
考えに考えたあげく、これから2か月間、その役を背負うわけですから、そこを信頼して。誰がどの役をやっても成立してしまうと思います。こうして話していても、僕は楽観的というか、僕はそこにいないので。(笑) それはそういう企画にしようと思ったので。楽しみしかないです。稽古でどうなっていくのかも楽しみです。当時は本当に死にそうになって書いていました。みんなで一緒になって…、思い出します。最初の電話のシーンだけでも何日間もダメ出しした。愛と萌の二役も、当時若手だった松永玲子は大抜擢だったので…思い出します。

―日生劇場や帝劇で新作を…というお気持ちはおありでしょうか?
KERA:面白そうなら何でもやりたいと思っています。井上芳雄くんとストレートプレイをやったときに「今度、ミュージカルをやりましょうよ」と言ってくれて、その時は「やし、やろう!」と盛り上がったのですが…。面白そうならなんでもやりたいと思います。

 
「KERA CROSS」第一弾
『フローズン•ビーチ』
作 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
演出  鈴木裕美
出席 鈴木杏  ブルゾンちえみ  朝倉あき  シルビア・グラブ

7/25 長岡市立劇場大ホール
7/28いわき芸術文化交流館アリオス大ホール
7/31~8/11シアタークリエ
8/16~18サンケイホールプリーゼ
8/21静岡市清水文化会館マリナート
8/23日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
8/28須﨑市立市民文化会館
8/31レクザムホール(香川県県民ホール)小劇場