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Patch × TRUMP series 10th ANNIVERSARY『SPECTER』 松井勇歩&納谷健 インタビュー 松井「記録にも記憶にも残ることをやります」 納谷「クォリティの高い新しい『TRUMP』シリーズ作品と張り合い、追い越していけたら」

絶大なる人気を誇るTRUMPシリーズが、2018年のミュージカル『マリーゴールド』からTRUMPシリーズ10周年企画をスタート。今年3月4月には、2015年に劇団Patchの第6回公演として上演され、人気作として語り継がれてきた『SPECTER』が、キャストを一新してPatch × TRUMP series 10th ANNIVERSARY 『SPECTER』として上演される。

今回Astageは、この作品に出演する松井勇歩と納谷健にインタビューが叶った。

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松井勇歩    納谷健

『SPECTER』は、外界との関わりを絶って暮らす村で起こった凄惨な連続殺人事件から始まる。犯人は、繭期[人間でいう思春期]のための施設を脱走した吸血種の少年4人。事件解決のため、村人のひとりが2人のヴァンパイアハンターを村に招き入れたことで、事件は思わぬ展開を見せ始める…。

妖しくも美しい世界観、練りぬかれたストーリーに秘められた深い謎。
一瞬も舞台から目を話すことができない緊迫感と、登場人物ひとりひとりの存在感が観客をひきつける。

初演で繭期の吸血種・ヒューゴ役を演じた松井は、今回は主演として、吸血種と敵対するヴァンパイアハンターの臥萬里を演じ、初出演となる納谷健は、ヒューゴと共に施設を脱走した吸血種の少年・死を予知できるサトクリフを演じる。

『SPECTER』に挑む松井勇歩と納谷健としての、劇団Patchとしての思いを尋ねた。

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2015年末にインタビューさせて頂いた時は、劇団Patchのキャスティングは、劇団内オーディションだと伺いましたが、最近はいかがですか?
松井:『SPECTER』の作・演出の末満さんが劇団Patchの創設時から総合演出をしてくださっていて、前回末満さんが演出をして下さった2017年のPatch stage vol.10『羽生蓮太郎(はぶれんたろう)』までは、ほとんど劇団内で配役オーディションをしていました。
その次のPatch stage vol.11『JOURNEY-浪花忍法帖(なにわにんぽうちょう)-』からは、「より劇団らしく動いていこう」ということで、作品や演出を誰にお願いするかもメンバーで話し合い、キャスティングも作品によりますが最近は話し合いで決めています。ずっと一緒にやっているからこそわかる「彼はこれが得意だからこの役にしよう」とか、逆に「新しい挑戦をしてほしいから、この役をやってほしい」などとメンバー間で話し合いをしています。

萬里ソロカット

臥萬里:松井勇歩

―では、今回の『SPECTER』の配役も?
松井:末満さんに「キャスティングはどうしましょうか?」と相談したら「メンバーで話し合って決めていいよ」との言葉を頂きました。一度上演したことがある演目で、出演したメンバーもいれば、出演していないメンバーもいる。悩みましたが、最終的には劇団員でとことん話し合いしました。
初演に出演したメンバーはほとんどが「同じ役をやりたい」という気持ちだったので、出演していない劇団Patchの3期や4期の(納谷)健たちは「どう思っているのか?」「彼らが何をやりたいか?」から聞き始めました。
前回のキャストはそのままに、未定の役に新たなメンバーを入れる形にするのか、全キャストを替えて新しいスペクターをつくるのか…大きく2択になりました。
話し合っていく中で、再演ですが「新しい挑戦として新しいスペクターを作ろう」ということになって、配役を決めていきました。

―納谷さんはキャスティングでの話し合いではいかがでしたか?
納谷:僕は最初「どの役でもいいです」と言いました。(笑) ちょうどその時期、僕はいろいろと悩んでいた頃で、「自分に何が合うのか、何ができるのか」よりも、劇団Patchの一員として参加できることが嬉しかったので、劇団員の一人としてまっとうできるのであればどの役でもいい。作品に思い入れの深い先輩方の考えを尊重したいと思っていました。

―それから松井さんが臥萬里を演じる新たな配役へと決まるのですね。
松井:末満さんから「話し合って決めていいよ」と言われた後、プロデューサーと当時のマネージャーから「2つの選択肢のうち、新たなキャストでいきたいい」という希望を聞かされました。その時に「臥萬里を勇歩に任せたい」との話ももらったのですが、自分は前回と同じヒューゴ役をやるつもりでいましたし、劇団Patchとして大きなチャンスとなる今回の公演ですから、僕には決めることができず、みんなで話し合いたいと思い、すべてを打ち明けて話し合いをしました。
一人一人の考えと全体として意見をきいて、みんなが僕に「臥萬里役を任す」と言ってくれたので、それで覚悟が決まりました。

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サトクリフ:納谷健

納谷:僕はメンバーで話し合った段階では、劇団Patchとしてやるのですから、全員のキャラが立って上手くはまるキャスティングになるといいなと思っていました。最初、僕の役はサトクリフではなく、でもかなり美味しい役でしたが(笑)、末満さんと相談した結果、僕はサトクリフ役になりました。配役が決まって改めて台本を読み直してみて「いいバランスの配役になったな」と感じました。
繭期の4人組を引っぱって行く役割のヒューゴ役は、劇団Patch1期生で僕と同い年の井上(拓哉)くんで、他の3人が4期生の僕たち。役での関係性もリアルなものとして届けられるのではないかと感じました。4人組の一体感など大切な部分も、すでにある程度は元から出来ているので、新たなものが生み出せるのではないかと思って、もう繭期グループを作って話し合っています。
松井:ホンマに?いゃ~、教えてよ。
納谷:繭期グループとしては始めていますよ。
松井:繭期は繭期のメンバーで話し合ったりするのがいいよね。僕たちも初演でやったよ。
納谷:やはり『SPECTER』では、人間側と繭期のヴァンパイア側とに大きく分かれているので、全体はもちろんですが、各々のグループのバックボーンをしっかり固めた方がキャラクターに深みがでるのではないかと、話し合っています。

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―役作りですね。松井さんは、石舟役の竹下健人さんと2人でヴァンパイアハンター側ですね。
松井:前回演じたのは、繭期のヴァンパイアのヒューゴ役。今回演じる萬里役はヴァンパイアハンターと、対となる反対の役を演じることになるのでファンの方たちからは「一人TRUTH―REVERSEだ」といわれているようです。
演技プランとしては「作り込んでいくのはいやだな」と思って、あえてまだ作っていません。今はまだ前回、中山(義紘)が演じた萬里役のイメージが、どうしても頭のどこかに残っているので、周りの空気をつかまないで自分で役を作っても活きてこないだろうと思うのです。今、自分だけで役作りをしてしまうと、中山の萬里に寄せないようにとか、無駄なことが入ってしまう気がしますが、それは必要ない。ならば皆といっしょになって空気感を見ながら作っていこうかなと思っています。
もう一つ、面白いと思っているのは、(竹下)健人とは劇団Patch1期生でもう7~8年のつきあいになりますが、このふたりでコンビの役をやったことがないんです。僕と健人とは、人間性がホントに真逆なんです。(笑)健人はドがつくほど真面目!僕も自分では真面目だと思っていますが、よく健人とは真逆だと言われます。(納谷の視線を感じて)その目、やめてくれる?!(笑)
納谷:周りを見つつ発散するタイプ(の松井)と内に閉じこもりがちなタイプ(の竹下)と、真逆の二人ですね。後輩から見ると、このコンビはありえないようにも思うのですが、今回はハンターという仕事でのコンビですからね。いったいどうなるのか、とても楽しみなところです。先日健人くんとも一緒に食事に行きましたが、健人くんも「自分の役はどうなるんだろう…」と考えていたので「真面目な健人くんらしいなぁ」と思っていました。
松井:健人とは役へのアプローチの仕方も違うのですが、つきあいも長いので互いに考えていることはよくわかります。僕の萬里と健人が演じる石舟との関係も、近すぎず遠すぎずの関係ですから、稽古に入ってやりながらつくりたいなと思っています。

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―末満さんとは久しぶりでのお仕事ですね。ビジュアル撮影などでご一緒された時に、変わったことはありましたか?
松井:変わったことより変わらないこととして、やはり「末満さんは細かいことまで、すべてにこだわりがあるなぁ」と思いました。劇団Patchができた時から、僕は演劇のすべてを末満さんから教えてもらってきたので、末満さんと一緒だと、自然に背筋が伸びます。言い方が難しいのですが、最初の頃は何も分からなかったので、末満さんがつくってくれた道をただ歩くだけ、頼るばかりでしたが、2年前に末満さんと一緒にやったPatch stage vol.10『羽生蓮太郎』の時に、「役についても作品についてもちゃんと話ができるようになってきたような…」と「横に並んで話をしながら作品を作っていける兆し」を感じていたので、今回も一緒に作品を作っていけるように、変わっていきたいと改めて思いました。
納谷:末満さんの教えを受けてきた先輩方がいて、僕はそこに後から入ってきた4期生です。末満さんにしごかれている先輩を見てきましたし、自分たちもそれなりに末満さんに鍛えられてきたので、やはり末満さんが「怖いな」「ちゃんとしなきゃ」という気持ちがありますが、ビジュアル撮影やニコ生の番組でご一緒した時に、末満さんが興味があるものに僕も興味をもって質問したり、末満さんの作品作りやニューヨーク旅行の話をしたりするうちに「作品作りで僕等が目指すべき“ものさし”となる人だ」と感じて、末満さんとやることでモチべーションが上るのを感じました。末満さんにとっても僕たちが成長し引出しを増やすことが喜びにつながるのでは…と思うので、個人としても劇団Patchとしてもがんばりたいと思っています。

―では、改めて今回の『SPECTER』の面白さを教えて下さい。
松井:劇団Patchメンバー1期生の中でも、僕は演劇との関わりが一番遅く、演劇を見たこともないまま劇団Patchの活動を始めました。舞台とはどんなものかも知らず、「とにかく見なさい」と言われて、生まれて初めて劇場で観た演劇が『TRUMP』でした。「これが芝居なんだ」「面白い!」と強烈な衝撃を受けました。「僕はこれをこれからやっていくのか」と思いました。それから2~3年経った時に、「あの『TRUMP』の新作を劇団Patchでやる」と聞いて「舞台に興味もなかった僕を動かしたあの作品の新作を、僕等ができるのか」と思いました。その当時はまだ、未熟だったので、がむしゃらにやることしかできず、今思い返しても、初演の『TRUMP』をどうやったのか、記憶があまり残っていません。それまでの最多公演数だったのに、あっという間だったということしか覚えていないんです。だから再演が決まった時、「ヒューゴをやりたい」と思いました。当時も後悔ややり残したという思いがあったわけではないのですが、「今の自分がもう一度挑戦したい」という気持ちがありました。
その「挑戦したい」という気持ちは、萬里役をやることになっても変わっていません。今の劇団Patchができることを最大にお見せしたい。その当時はいなかった四期生もいます。この後輩たちが優秀なんですよ。ホントにいい子で真面目で。「本当にお芝居が好きなんだな」というメンバーばかりで、新しい風を吹かせてくれた。僕等は示せるものを示し、後輩たちも僕等の芝居に答えてくれると思うので、信頼しつつやっていきたいと思っています。
納谷:まだ自分はこうしたいと考えている段階ですが、「いい作品にしたい」という思いがすべてです。『SPECTER』は一言では言い表せない要素がたくさん詰まっていますが、ストーリーは分かりやすい。一言では言い表せないものを伝えるためには、クオリティや作り込みについて前回は考えられなかったと言う部分も、今の劇団Patchならもっと踏み込んでつくることができると思います。『TRUMP』シリーズはクオリティの高い新しい作品が次々生まれていますが、『SPECTER』もそれらの作品と張り合い、追い越していけるといいなぁと思っています。

―そして今回も大阪と東京での公演となりますね。
松井:(演劇の聖地と言われる)本多劇場に立たせて頂くのは、とても幸せなことです。そこで劇団Patchとしても、一人一人としても基礎を固めチャンスを広げていければと願っています。
そして劇団創設当初の夢だった大阪ピロティホールでの公演に、今回はまた挑戦できます。しかも公演数も増えて、とても有難いです。
僕等にとっては平成最後の舞台。観客のみなさんにも、平成最後の観劇になる方が多いかもしれませんね。
この公演で「できれば」という考えは一切ありません。記録にも記憶にも残ることをやります。大阪は僕等のホームなので、ホームの力を借りつつ、でっかいことをまず大阪からやりたいと思っています。
納谷:「演劇で大阪を元気にしたい」というのが劇団Patchの始まりなので、劇団Patchにとって、大阪公演はやはり特別なものです。だからこそ、今回の公演も大阪からスタートします。その始まりを是非とも観に来て欲しいです。

松井勇歩(まつい ゆうほ)
1991年10月30日生まれ 兵庫県出身
極上文學 第13弾『こゝろ』、舞台『野球』飛行機雲のホームラン〜HOMERUN OF CONTRAIL 、舞台『黒子のバスケ』IGNITE-ZONE 伊月俊役、舞台『私のホストちゃんREBORN』〜絶唱!大阪ミナミ編〜 檸檬役(2018年)など出演多数
5月には舞台『DYNAMIC CHORD the STAGE』出演予定。

納谷健(なや たける)
1995年8月7日生まれ 大阪府出身
ミュージカル『薄桜鬼 志譚』土方歳三 篇 斎藤一役、舞台『七つの大罪 The STAGE』メリオダス役(2018年)、舞台『刀剣乱舞』ジョ伝 三つら星刀語り 小夜左文字役、舞台 『煉獄に笑う』百地一波(八它烏)役(2017年)など多数出演。
10月にはエン*ゲキ#04『絶唱サロメ』出演予定。

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Patch × TRUMP series 10th ANNIVERSARY『SPECTER』
大阪公演:2019年3月29日(金)~3月31日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
東京公演:2019年4月19日(金)~4月21日(日)
会場:本多劇場
料金:一般 7,000円(全席指定/税込) ※未就学児入場不可
『TRUMP』シリーズ10周年 公式HP:https://trump10th.jp/
劇団Patch 公式HP:https://www.west-patch.com/

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