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映画『さようなら』難民支援協会 コラボ試写会&シンポジウムイベント

タイトル

―「さようなら」をとおして難民問題について考える―
難民支援協会コラボイベントに登壇の
深田晃司監督、日本の難民問題の現状に驚き、
「他者の苦しみを想像することが重要」と提言!

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世界初の人間とアンドロイドが共演する映画として話題の『さようなら』(11月21日公開)。
本作は原因不明の原子力発電所の爆発により、日本で難民となった南アフリカ人女性が主人公であり、移民・難民問題を中心とした社会問題が描かれています。そして本作のテーマに絡めて、昨日、認定NPO法人難民支援協会とコラボ試写会&シンポジウムを実施した。

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11月18日、深田晃司監督、主演のブライアリー・ロングさんと特別ゲストの認定NPO法人難民支援協会・田中志穂さんがシンポジウム付き試写会に登壇し、現代の日本が抱える移民・難民問題について熱い議論が交わされました。
本作で社会問題の要素を盛り込んだ理由について深田監督は、「この映画の原作は平田オリザさんの戯曲なのですが、もともと戯曲の方には原発や難民問題の要素はありませんでした。ただ荒廃した近未来の日本を舞台にしたいと思ったとき、装置として原発の事故という設定にしました。そして、震災の時に「絆」や「頑張ろう日本」という言葉が、国内多くで叫ばれ、同じ被害に合っている日本在住の外国人が完全に無視されている状況に違和感を覚えたのも、外国人難民を本作の主人公にした理由のひとつです。」

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主演のブライアリー・ロングさんは「親の仕事の関係で幼少期より何カ国かに移り住んで生活してきたのですが、2010年より日本に住み、翌年に震災も経験しました。しかし、普段日本で生活をしていて、まだ社会の一部になりきれていないと感じることもあります。そういう状況の中、外国人でありながら日本映画の主役を演じることができて大変光栄に思います。」「以前、ベトナムからボスニアに移り住んだことがあるのですが、その時はとても楽な気持ちになりました。アジア圏では白人で金髪の女性は良くも悪くも特別な目で見られることが多いです。」と日本で女優として活動していての心境を語られました。

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そして、特別ゲストとして登壇した田中さんは「現状、日本には年間5000人の外国人難民認定の申請があるなか、その0.2%に当たる11人しか政府より認定がおりていません。これは、諸外国と比較してもかなり低い数字です。そして、申請の結果が出るまで3年の時間を要し、下りるケースの場合は5年はかかることが大半です。これら現状の要因の一つとして、入国管理局の審査の厳しさが考えられますが、加えて日本社会特有の、盲目的にリスクをゼロにしようという考えも大きく影響していると思います。ヨーロッパでは、ただ難民を排除するのではなく、リスクに対処し乗り越え、その先どうするべきかが話し合われています。」「フランスでのテロ事件を受けても、日本ではさらに難民を排除する方向に議論が進むのではないかと思います。」と日本の難民問題の驚きの現状とヨーロッパとの難民問題への向き合い方の違いを解説し、客席からは驚きの声が漏れてきました。国内の現状を聞き、深田監督は「生きるということは、多かれ少なかれ誰かに迷惑をかけることであり、リスクが伴うことでもあると思います。リスクを乗り越えた先に何があるのか、という議論が日本国内でも、もっと活発になることが重要であると思います。」「ヘイトスピーチや、SNSで出回ったシリア難民を風刺したイラストなど、それぞれの想像力が完全に欠如していると感じます。映画同様、誰もが難民になる可能性を含んでいると思います。ひとりひとりが他者の苦しみを、想像することが重要であると思います。」と社会問題への独自の見解を披露しました。

最後に監督より「原発や難民問題でも、死についてでも、この映画を観ている2時間が、皆さんが何かを考える時間になって頂けたら嬉しいです。」と挨拶があり、大きな拍手の中3人は会場を後にしました。イベント終了後もQAセッションで質問ができなかった多くのマスコミや観客が3人に列を作り、質問や意見を投げかけられ、熱い議論が交わされました。

【深田晃司 監督】
2005年、平田オリザ主宰の劇団青年団に演出部として入団。2010年に『歓待』が東京国際映画祭日本映画「ある視点」部門作品賞、プチョン国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞。2013年『ほとりの朔子』がナント三大陸映画祭グランプリ&若い審査員賞をダブル受賞した他、各国の映画祭で賞を受賞し海外からも注目を集める気鋭の映画作家である。本作では、原作にはない“難民”“原発の爆発”という設定を脚本に加えた。

【ブライアリ―・ロング】
本作で日本在住のアフリカ難民である主人公を演じた。アメリカ合衆国・ワシントンD.C.出身。06年にオックスフォード大学日本語学部に入学、10年に首席で卒業。その後、日本に移住し、俳優として青年団に入団。原作であるロボット演劇「さようなら」(10/平田オリザ演出)でも同じ役を演じている。英語、日本語を含めた7か国語を話す。

【認定NPO法人難民支援協会・田中志穂】
認定NPO法人難民支援協会・広報部コーディネーター。一般企業(食品メーカー)勤務を経て、大学院にて社会学修士修了(移民研究に従事)。大学院在籍中にフィリピン移住女性を支援するNGO活動に関わり、2010年8月より現職。認知啓発・資金調達を担当する傍ら、東日本大震災後は被災地の外国籍住民への就労支援事業も担当。

<物語>
汚染された世界で生きるターニャと”アンドロイド”のレオナ。死を見つめて、生を想う―
日本で稼働する原子力発電施設の爆発によって放射能に侵された近未来の日本。日本の国土のおよそ8割が深刻な放射能汚染に晒され、政府は「棄国」を宣言した。各国と提携して敷かれた計画的避難体制のもと国民は、国外へと次々と避難していく。その光景をよそに、避難優先順位下位の為に取り残された南アフリカの難民、ターニャ(ブライアリー・ロング)。そして幼いころから病弱な彼女をサポートするアンドロイド、レオナ(ジェミノイドF)。彼女たちのもとを過ぎていく多くの人々。そしてそれぞれの生と死。やがて、ほとんどの人々が消えていく中、遂にターニャとレオナは最期の時を迎えることになる・・・・・。

<原作・アンドロイド演劇「さようなら」とは>
平田オリザとロボット研究の第一人者である石黒浩( 大阪大学大学院教授・ATR石黒浩特別研究室室長 )が、大阪大学にて2007年から共同で進めているロボット演劇プロジェクトの最新作であり、人間俳優とロボットが世界で初めて共演し、芸術と科学が交差する画期的なコラボレーション作品。2010年、世界に先駆け「あいちトリエンナーレ」で初演され、その後も東京、大阪、オーストリア、フランスなどでも上映され、現在も各国より上演依頼が殺到している。まさに21世紀初頭に生まれた歴史的記念碑的演劇であると言える。
約20分の短編作品の中で、死を目前にした少女にアンドロイドが谷川俊太郎、ランボー、若山牧水などの詩を淡々と読み続けるその静謐な時間は、「人間にとって、ロボットにとって、『生』とは、そして『死』とは…」、鋭く問いかける。

脚本・監督:深田晃司(「歓待」「ほとりの朔子」)
原作:平田オリザ アンドロイドアドバイザー:石黒浩
出演:ブライアリー・ロング、新井浩文、ジェミノイドF、村田牧子、村上虹郎、木引優子
配給・宣伝:ファントム・フィルム
公式サイト:http://sayonara-movie.com

11月21日(土) 新宿武蔵野館ほか全国ロードショー!