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「大貫勇輔が生きているケンシロウを作る」「想像を超えてくる作品になる」ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』大貫勇輔インタビュー

上演決定が発表されると大反響を呼んだミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』が、12月8日(水)から開幕する。
演出は石丸さち子、音楽はフランク・ワイルド・ホーンが担当。
最高のキャスト陣をそろえて、2022年の中国公演をも見据えての世界初演となる。

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今回、ご登場いただくのは、この公演で主人公ケンシロウ役をつとめる大貫勇輔さん。
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で死のダンサー役として演劇界に華麗に登場してから10年。舞台からドラマ・映画へと目覚ましい活躍を遂げてきた彼に本作への役作りや意気込み、そして10年を振り返ってのお話までうかがいました。

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―本作の出演が決まった時から順に、どんなお気持ちだったか、教えてもらえますか?
最初に聞いた時は「ミュージカル化?僕がケンシロウ?という驚きの連続で現実感をもてないまま「がんばります!」という感じでした。でも「多くの方に愛されているあの名作だ。神谷明さんの素敵な声で聴いていたあの有名なセリフを僕が言うのか」と思うと、次第に不安が大きくなってきました(笑)。
そんな中、ビジュアル撮影があって、ヘアメイクや衣装、多くの方のご協力を頂いて写真撮影をして、出来上がった写真を見たときに「えっ!かっこいい!ケンシロウになれている!」「いろんな方の力を借りれば、ここまでケンシロウに近づけるんだ」と思えて、そこで初めて「やれるかもしれない」思いました。
それまでも自分ではトレーニングして筋肉をつけたり、歌のレッスンに励んだり、原作を読み込んだりはしていましたが、かなり長い期間、不安を抱えたままいたので、ビジュアル撮影でケンシロウの扮装をしてみて、少し光が見えた気がしました。そこに脚本や楽曲が届いて「ミュージカルにして正解なんだ!」と思いました。

―「ミュージカルにして正解」というのは?
楽曲では、漫画の中では語られていないようなセリフを歌詞にのせて歌います。音楽の持つ力というか、実はケンシロウはこんな気持ちだったのかもしれないと思えて、役に感情移入しやすくなりました。きっとお客様もミュージカルになったことで、どんどんのめり込んでいくに違いないと思えて感動しました。音楽の力、ミュージカルの力はすごいと感じました。

―楽曲について教えて頂けますか?
ロックからバラード、語りのような曲までバラエティに富んでいます。ワイルド・ホーンさんの楽曲は耳に残るし、ザ・ミュージカルという感じでゴージャスな曲もあるし、胸躍る曲もあり、悲しい曲は胸に突き刺さりますまさに「北斗の拳」にふさわしい楽曲の数々です。だからこそ観客もそこに没入できる。あとは僕がどれほど語るように歌えるか…というのが、課題のひとつだと思いますが、音楽がとても助けてくれる。音楽が背中をささえてくれている感覚で歌っています。

―ワイルド・ホーンさんの楽曲は難しいとよく聞きますが。
楽曲は難しいというよりも、むしろ助けてもらっている気がしているので、僕はそこに素直に乗っかって役のままに語るように歌えばいいものになるに違いないと思っています。
ケンシロウの楽曲は、歌っていて気持ちよく、素直に役に入っていけると感じます。

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―これまでにどんな準備をされてきたのか、具体的に教えてもらえますか?
稽古は歌稽古やワークショップから始まり、本読みも通してやりました。個人的には2月から空手の稽古をしました。まずは自重でトレーニングを始めて、それから週二回の加重のトレーニングを始めました。体重は増量期と減量期を繰り返すので、増減は激しかったです。この1年でいえば、痩せているときから比べると、最大で12㎏太り、それから今は減量期で少し痩せました。

―目標はあるのですか?
全体的に鍛えていますが、僕は肩と胸に筋肉がつきにくいので、そこを重点的にやりながら、絵のイメージと違わないようにお客様に見て頂いた時に、やはり「すごいな」と思っていただけるようなところまで持っていきたいと思っています。でも難しいものですね。筋肉がつくのは時間がかかるものなので。どこまでできるか、最後までやり抜きたいです。

―しなやかな動ける筋肉が必要そうですからね。
最近の自分が踊っている動画を見ると、体のラインが随分変わっていて驚いています。こトレーニングを始める前に骨量と筋肉量と脂肪の量を量って、最近また量り直したら筋肉だけで2.5㎏増えて、胸囲が1年前より10㎝大きくなっていて、びっくりしています。「トレーニングすれば大きくなるんだ」「でも、あのケンシロウの体になるのは大変だ」と思いながら必死にやっています(笑)。

―12月の日本公演の後は、来秋の中国ツアーもありますから、作った体はどうされるのですか?
維持したいと思っていますが、間にミュージカル『メリー・ポピンズ』の再演もありますし、踊るときには邪魔にもなるので、そこをうまく調整しながら鍛え続けたいと思っています。

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―話が少しさかのぼってしまいますが、「北斗の拳がミュージカルになる?!」ということで衝撃を受けた方が多いと思いますが、いわゆる「2.5次元ミュージカル」のとは違いますか?
「何を2.5次元ミュージカルというのか」ということが、ひとつ問題ではあると思いますが、僕が出演した『王家の紋章』や、幾度も上演されている『デスノート THE MUSIAL』を観たときに、「漫画原作だ」とは思いましたけれど「2.5次元だ」という感覚がなかったです。だから、きっとそれに近いものになるのではないかと思っています。
本稽古前のため(取材時)、具体的にはまだわからないのですが、石丸さち子さんは「ザ・演劇」の方の演出なので、「こんな人が実在していたかもしれない」と思わせてくれるリアルさ、漫画の中のキャラクターですが「本当にこんな人が生きていたかも」と思わせてくれるような説得力を持たせたいと僕は思っていますし、きっと石丸さんもそう思っておられるのではと思います。
原作をリスペクトしながらも、今、なぜ僕たちが集まって『北斗の拳』をミュージカルとしてやるのか、なぜ僕がケンシロウを演じるのか、大貫勇輔が生きているケンシロウを作るということを目指してやりたいと思っています。

―「僕がなぜケンシロウをやるのか」については、現時点ではいかがお考えですか?
ケンシロウは寡黙な役なので、僕と通じるのは言葉のない「ダンス」ではないかなと思います。僕が小さい頃からダンスを続けてきたのは、言葉にならない何かがずっとあったんだなと感じていて。それを発散するのがダンスだった。ダンスに救われてきた。
それがケンシロウと通じるものだと思っています。
言葉にならない叫びを表現して踊るシーンがいくつかあるので、そこが僕がケンシロウを演じる意味のひとつ、そして作品の見どころでもあると思っています。

―空手を練習していてダンスもある。中国出身の顔安(ヤンアン)さんも加わられるそうですね。
顔安さんは中国舞踊の方で、僕は2017年に湖月わたるさんや水夏希さんら『Cosmos Symphony Pukul(プクル)-時を刻む愛の鼓動-』でご一緒したことがあります。
空手はアクション指導の渥美さんが「空手の動きは体幹を鍛えるから、アクションのために空手をやった方がいい」とアドバイスを下さったので始めました。ケンシロウの動きはブルース・リーの截拳道(ジークンドー)の動きからきているそうで、空手とはまた違うそうですが、ダンサーはアクションや殺陣をすると踊ってしまうので、それを防いで、リアルな闘いをお見せできる体づくりのためです。

―アクションにも期待がふくらみます!
ダンサーですがアクションにも力をいれて、迫力あるアクションシーンをお見せしたいと思います。
渥美さんとも付き合いが長いのでいろいろとお話をさせて頂いていて、「楽しみにしているよ。こっちは気合入っているよ」とおっしゃっていただいています。渥美さんはエネルギーが無尽蔵な方なので、ついていくのは大変だなと思いながらも、すごく楽しみにしています(笑)。

―もうお一方、辻本知彦さんは、大貫さんが師匠と崇める方ですね?
僕からこの作品への参加をお願いしました。師匠と思う方はたくさんいますが、ダンスで本当に弟子入りしたのは知さんだけ。今も尊敬し続けているダンサー・振付家なので、知さんに加わって頂けてとても心強いです。

―では最初の不安はどんどん解消されて…
もうむちゃくちゃ楽しみになっています。

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―ところでAstageが大貫さんにインタビューさせていただいた最初は、2015年の倉持裕さん作・演出の『ブロッケンの妖怪』で、その時は「ダンサーにとどまらず、俳優としてがんばります」とおっしゃっていたのが印象的でした。そして、次の2020年頭の『ねじまき鳥クロニクル』では「ダンサー出身だからできるものがある」とおっしゃっていました。そして今、見えている景色を教えて頂けますか?
映像作品の経験を積ませて頂いて、ミニマムな世界というか、画面の中で何を見せなきゃいけないか、こうするとどう見えるのかというのにこだわった経験をさせて頂きました。
「ダンサー出身だからできるものがある」と通じることかもしれませんが、心のポジションで踊りも変わるし、体のポジションで心も変わるということを感じています。それは舞台のような全体が見られる世界でも、一部しか見えていない画面でも同じだと感じています。
さらに歌ということでは『王家の紋章』ではダンスを完全に封印して歌とお芝居で見せなくてはいけなかった。しかもイズミル役の曲がとても難しかったので、歌と真剣に向き合いました。歌声についても、心のポジションで変わってしまうのだと体感しました。イズミル役はとても大変でしたし、歌の難しさはこれからもずっと続いていくものですが、イズミルで大きなステップを体験して、声の持つ力もとても面白くなってきて、今は「歌が上手くなりたい!」「歌だけでもお客様を魅了できる俳優になりたい」というのが『王家の紋章』を終えての今、思うことです。
歌も筋肉と同じで、1日で上手くなることは絶対にないので、ずっと続けていかなければいけないと思っています。

―喉も筋肉だと聞きますが…。
本当に筋肉です、間違いなく。

―『王家の紋章』は大きな経験になったのですね。
帝劇での8月公演を終えて、9月の博多座の後半ではシングルキャストで毎日公演があって、それはとてもいい経験になり成長できたという実感がありました。

―そして迎えるミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』です。
ここでの僕の心配は、叫ぶ場面が多いので、叫ぶことで喉をつぶしてしまわないか…ということです。リアルな叫びをしてしまうと、喉が耐え切れないと思うので、喉をつぶさずにリアルな叫びの発声を稽古の中で見つけていかなければと思っています。ケンシロウは多くを語るキャラクターではないですが、歌とセリフと動きが同じくらいの比重という印象です。ダンサーの経験を活かしながら、歌でもロックやバラード、語りかける曲と、様々な楽曲にチャレンジをさせて頂けるのがとても有難いです。

―常に努力を重ねていらしたのですね。最後に、本作の観劇を迷っている方へメッセージをお願いいたします。
今やる意味がある作品だと思います。最初に「『北斗の拳』をミュージカル?」と思いましたが、作品の魅力と音楽のパワーが相まったミュージカルでやる意味を感じています。
そして作品が長く愛されている理由は、深いメッセージ性がある点だと思いますが、エンターテインメントでもあり、華やかだけど深い愛がテーマにある。その原作の魅力を音楽の力と、俳優とスタッフが一丸となって素晴らしいエンターテインメントに作り上げていきます。怖いもの見たさでもよいですし、想像を裏切らない、いや、いろんな意味で想像を超えてくる作品になると思うので、幅広い年代の方にご覧いただきたいと思います。

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kiリーフレットA4キャスト名明記

ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』
原作:漫画「北斗の拳」(原作:武論尊 漫画:原 哲夫)
音楽:フランク・ワイルドホーン
演出:石丸さち子
脚本・作詞:高橋亜子

ケンシロウ   大貫勇輔
ユリア役 平原綾香 May’n (Wキャスト)
トキ 加藤和樹/小野田龍之介(Wキャスト)
シン   植原卓也/上田堪大 (Wキャスト)
リュウケン他   川口竜也
トウ 白羽ゆり
マミヤ 松原凜子
レイ、ジュウザ  伊礼彼方/上原理生
ラオウ 福井晶一・宮尾俊太郎

2021年12月8日(水)~29日(水) 日生劇場(東京都千代田区)にて上演
2022年1月8日(土)9日(日)   梅田芸術劇場メインホール
2022年1月15日(土)16日(火) 愛知県芸術劇場大ホール

主催:ホリプロ/博報堂DYメディアパートナーズ/染空间 Ranspace/イープラス
企画制作:ホリプロ
(C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983 版権許諾証GS-111

公演ページ
https://horipro-stage.jp/pickup/fons20210913/
https://horipro-stage.jp/stage/musical_fons2021
北斗の拳オフィシャルウェブサイト:http://www.hokuto-no-ken.jp/