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加瀬亮&篠原篤Wインタビュー!WOWOW「ドラマW この街の命に」

日本国内で1年間に10万頭を超える犬猫が殺処分されている現実。ある街の行政組織「動物愛護センター」を舞台に、罪のない動物たちの命を救うべく過酷な現実と向き合い葛藤し、再生の道を見出していく獣医たち職員の姿を描いた人間ドラマWOWOW『ドラマW この街の命に』。

『いつか読書する日』の脚本・青木研次と監督・緒方明がタッグを組んだ本作。行政獣医として現実に困惑する牧田洋を務めるのは、ドラマW初主演の加瀬亮。同僚の行政獣医・幡枝亜紀役に戸田恵梨香、センターの新任所長・高野綾子を田中裕子という豪華なキャストが揃った。また、牧田の同僚で黙々と作業を務める木崎良太役を、映画『恋人たち』で数々の新人賞を獲得した期待の新人・篠原篤が演じている。

ドラマの放送を記念し、加瀬亮と篠原篤が作品について、また俳優としての思いを熱く語ってくれた。

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ーー「 WOWOWドラマW」の魅力はなんでしょうか?
篠原篤(以下、篠原):僕はまだ(俳優としての)経験が少ないので、映画やドラマの違いなどをあまりよくわかっていませんが、現場でみなさんが、「こうやって、限りなく映画に近い撮り方っていうのはね・・・」という話をしているのを聞くと、「じゃ、普段のドラマ(の撮り方)って違うんだ」と思いました。今回、僕の役は大きな役ではないですが、僕でいいよって声をかけてくださった方がいたので、何のドラマということを考えることなく純粋に演じさせていただきました。

加瀬亮(以下、加瀬):僕も違いというのは明確には分かりませんが、以前WOWOWのドラマに出演したときもそうだったのですが、企画を立てた方の素直な感動から始まっている。それが大事なんです。興行的な作り方とは真逆ですね。今は、そういう出発の仕方が成立しにくくなっていますが、そういうところが今回もオファーをいただいたときにいいなと思いました。
ドラマ、映画、大小に限らず、本来はそうであってほしいです。

ーー動物愛護センターの話はこれまでもドキュメンタリー番組等で取り上げられてきましたが、今作は、犬や猫の殺処分や行政獣医の方たちの心情をていねいに描いています。出演する前と後ではご自身の中で考え方など変わったことはありますか?また演じる上で気をつけたことはありますか?
篠原:動物愛護や殺処分の問題等を通して、(篠原演じる)木崎は仕事とは何か、自分の守りたいものと、次のステップへ進むときに失ってしまうのではないかとリスクに感じることに悩みます。でも、それはこの仕事に限らずいろんな仕事に通じることだと思います。ただ、目の前に命があるということで、観ている人にはわかりやすく、演じる者には直接的(な表現)であるのではないでしょうか。僕自身は、このドラマが終わったあと、仕事について色々考えました。働いてお金を稼ぐということだけではなくて、せっかくこの世に生まれてきたのだから、この限られた命を何に使おうかとか・・・。もちろん動物に対する想いもありますが、正直、このドラマが終わったあとは、自分の仕事や取り組もうとしていること、日常の生活すべてを含めて世の中の役割は何なのかを凄く考えるようになりました。

加瀬:撮影した施設で長く勤めている職員の方に、「どんな仕事ですか?」と伺ったときに、何とも言えない顔で「片手で犬を撫でて、片手で絞め殺している、そんな仕事だよ」とおっしゃっていて。矛盾し、引き裂かれた思いを持ちながらやり続けているんだなと感じました。“命”と広義的にいってしまうと大きくなってしまいますが、今回演じるときには犬と猫、またはペットと絞って考えました。それを“命”と思っている人もいれば“物”と思っている人もいる。その幅はもの凄く広いので、「これが正しいですよ」と言い切るのは難しいです。でもそういう広い振幅の中で何が考えられるのかを、台本をいただいてから一つ一つ丁寧に考えていきました。終わってから変わったことと言えば・・・、街にいる犬と猫が以前よりたくさん目に入ってくるようになったことですかね(笑)。
犬への接し方なども教えていただいたので、飼い主と犬の関係をつい、パッと見ちゃうんです。

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ーードキュメンタリーのように淡々と話が進んでいくドラマの中で、演じていて難しかったことはありますか?
篠原:クランクインする前から気になっていたことは、自分は他の役者のみなさんと同じようにできるだろうか、ということでした。(途中からの参加になったため)“ずっと一緒に働いていた雰囲気”が出せるか心配していましたが加瀬さんをはじめ、みなさんがとてもいい雰囲気を出してくださって凄くやりやすかったです。木崎という役はドラマの中では接着剤のような存在。テクニカル的なことを含めて監督の演出に応じ、与えられた役割を果たしたつもりです。

加瀬:いつも社会的な題材のときに思うのは、映画であれドラマであれ、道徳の授業の場ではないので、「答えはこうですよ」とかいうものはなんだか違うなと思っています。作っている自分たちも観ていただく方たちに頼ることしかできない。自分たちに出来るなるべく多くの質問を作ること。むしろ、観ていただいた方に最終的に教わっていくことではないのかなと。自分が他のドラマを観ているときに、頭ごなしに「こうだ!」と言われると、ちょっと引いてしまうので。

動物愛護とかペットの問題は、好きな人は思い入れが強いので感情的になりやすい。犬が苦手の人もいれば猫アレルギーの人もいると思います。犬や猫が嫌いといっても、別にその人が悪い人ということではないと思うので、そういう人を取りこぼしてしまうと、一方通行なものになってしまうと思ったので、最初に読んだ時にこのドラマの作り方や、静かさがいいなと思ったんです。もしかしたらエンターテイメント的には感情的に激しく泣いたりすることはないので、それを求める人には違う作品かもしれません。しかし、このような問題に真摯に向き合うドラマとして、凄くていねいに作ろうという意思を感じた作品でした。

ーー篠原さんは、演じ終わって、新しい自分を発見することはありましたか?
篠原:撮影中に印象的だったことがあって・・・。腰まである動物を囲っているゲージを、加瀬さんが何気なくポーンと軽々飛び越えたんです。助走も短く、衣装を着たまま。それ見た時に、「これは僕はできないな・・・」と。自分の体重が重いってこともありますが(笑)、衣装を着たまま下が濡れた状態で、100%超えられる自信がないとできないこと。そんな加瀬さんを見て、「常に準備が出来ているんだな」と思う反面、体のしなやかさだけではなく、心のしなやかさというものを感じました。ジャンプして両足で着地した時のニコッと笑った加瀬さんの笑顔がいまだに忘れられません。ご本人を横にして言うのもなんですが・・・、演技含め色々な話もして教えてくださったんですが、それよりも、あのジャンプした瞬間の加瀬さんのようにいつか自分もなれるかなと、自分のなかに「俳優道、見たり!」という感じでした。ドラマ撮影が終わって散歩をしていると。もちろん以前より犬や猫が気になるようになりましたが、「僕はあの塀を飛べるかな?」とか「あれはいける! あれは無理だ・・・」って、そちらのほうが気になるようになりました(笑)。僕のイメージだけの世界ですが、いつかあんな風に飛べる俳優になれたらいいなと思います。

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加瀬:それって、単純に俺が運動神経悪そうに見えるのに、飛んだからビックリしたってことじゃないの?(笑)

篠原:解説されるとそういうことかも・・・ですけど(笑)。もしかしたら加瀬さんがおっしゃることをロマンチックに考えているだけなのかもしれませんが、そういう風に考えたいなと思わせる人です。今、僕のなかで憧れや目標は、「あのジャンプした加瀬さん」です!

ーーデビューされて16年目を迎える加瀬さんですが、作品を選ぶにあたって今、加瀬さんが大切にしていることは何ですか?
加瀬:仕事ですから、こう言うと叱れるかもしれませんが、気持ちの中では“道楽”なんです。まず、自分が(作品に)興味を持たないかぎり出来ないですね。普段からテーマを絞っているわけではなくて、誰かが心底興味を持って始めたことは僕も興味が持てるんです。それは自分の思いの時もあるし、他人の思いの時もある。結局、役者は現場に入ったら、ひたすら台本を見て、全部の時間を使ってその作品に向かい合うことになる。もちろん、「仕事だから興味ないものもやります」という姿勢もあるかもしれませんが、それだと自分の中から素直な“思い”が生まれてこない。そういう時の自分がどれだけ酷いかわかっているので、みんなで作っているのに、そこに興味のない自分だったら演技するだけで周りの人にも申し訳ない気持ちになります。本気でないところから自分たちが驚くようなものが生まれようもないですし。作品を作るときに、「今、世間ではこういうことがウケている」とか色んな事を言われるんですが、どういうデータで誰が判断しているのかな?って思うんですよね。自分が面白いと思うか思わないか・・・しか、本当のところは誰にもわからないんじゃないですかね?
だから僕は、これだったら自分が人に観てもらいたいと思える作品に参加したいと思っています。それが生意気だと思われたらそれまでですけどね・・・(笑)。

ーー本作に参加して良かったと思うこと。また俳優として一番やりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?
篠原:この作品に参加して良かったと思うのは、やはり「加瀬さんのジャンプ」ですね(笑)。自分にとっては、かけがえのないものです。誰も信じてくれなくてもね(笑)。
役者としてまだ多くの作品には出ていませんが、やっぱり観てくださった方にとって意味があって価値があれば、それが一番だと思います。見終わったときに「ありがとう」と言ってくださると嬉しいですし、「ああ面白かった、すっきりした」ということも大事ですが、それだけではなくて、「ちょっと眠れなくなった」とか「学校さぼっちゃおうかな」「仕事頑張ろうかな」とか、なにか振れるものがあればいい。そういうことがこれまでの自分にも価値があったし自分を助けてくれたので、ご覧になった視聴者の方が感じてくださって言ってもらった「ありがとう」が一番の特別な言葉ですね。

加瀬:僕の仕事は、「仕事が終わって家に帰って、仕事のことを忘れてプライベートを楽しんで・・・」というものではなく、そういう意味では変な仕事だなぁとずっと思っているんです。たまに、(現場と日常を)全く切り替えているというタイプの役者さんもいますが、残念ながら僕はそういうタイプではないので。あまり、仕事と日常の差がないというか・・・。例えば、撮影現場で「篠原くんに会えてよかった」ということは現場が終わっても続いていて、今でもしょっちゅう映画観て感想を触れ合ったりしているんです。作品は一つ一つ終わっても、ずっと続いている感じがしていて、そんな中で長く仲間だと思って付き合っていける人たちに出会えることは凄く幸せなことですね。田中裕子さんや戸田恵梨香さんも以前共演し今回もご一緒できて、やっぱりいいなと思いますし、みんなで飲みに行ってまた新たな面を知ったりして(笑)。そういうところも今回の作品に参加して良かったことですね。それって縁というか、自然にそうなるものなので、毎回出会いがあるわけではないので、今回の共演者の方々と出会えたことは本当に良かったと思っています。

役者としては、最近ますます「やっぱり作品がいいもの」と考えるようになっています。若い時は自分の事だけ、狭い範囲のところしか見えてなかったことを、先輩の役者さんや監督さんに注意されたこともあったのですが、その時はあまり意味がわかっていなかった。それが経験を重ねていくうちに、「ああいうことを言ってくれていたんだ」ということがわかってきて、今は昔よりも周りに頼っていますね。以前は作品の真ん中にいると「主演だから、頑張らなきゃ」と思っていたんですが、今は「演技はみんなでするものだから」と素直に思えるんです。昔より変わってきているんじゃないかな。今回の作品も観ていただけるとわかると思いますが、自分はほとんど何にもしてないかと (笑)。周りの方が助けてくれていると思います。

ーーところで、お二人は犬派?それとも猫派ですか?
加瀬:僕は犬派だと思っています。
篠原:実は僕、猫アレルギーを持っているんですが、でも猫は可愛いですよね。

ーー今作には、「人間と動物、その命」というテーマがありますが、お二人の考えとメッセージをお願いします。
篠原:人間の傲慢さを感じたり迷う人であれば、自分のことで迷う事と同じように目の前のものを見つめられると思います。この作品を観て何か感じたり迷うことがあれば、翌朝、目の前にいる自分のペットだったり、街中にいる動物や世の中で起きている動物に関する問題を目にしたとき、違うものが見えてくると思います。

加瀬:「動物と人」となると、「生きるためには命を食べないといけない」ということもあるので広義すぎてしまいますが、ペットに関していえば、ほとんどの場合が人間の問題。「犬や猫が大好きで最期まできちんと面倒みました」というのであれば、何も問題ないと思うんです。そうではない人がたくさんいる。今回の舞台は、元々は狂犬病対策から始まった施設ですが、「毎日殺していて酷いと思わないのか」と、施設にクレームが届くんです。それは向き合わないようにしている問題が来ているだけで、世間の人たちが施設の人たちにクレームすることではないと思うんです。何をどういうふうにきちんと自分自身が納得いく形で向き合い続けるのかを、僕自身にも突きつけられた作品だと感じました。

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「ドラマW この街の命に」

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<ストーリー>
動物愛護センターに行政獣医として配属された牧田洋(加瀬亮)は国の法律に従い業務を遂行する。飼えなくなった、鳴き声がうるさい、かまれたなど、さまざまな理由で捨てられた犬や猫を殺処分する業務だ。彼は“誰かがやらなけらばならない仕事”と自分に言い聞かせながらも悩み苦しんでいる。同僚の行政獣医・幡枝亜紀(戸田恵梨香)は病院に通い精神安定剤が手放せず、作業班の志賀悟(渋川清彦)は「犬がしゃべる」と言い出し
悪夢にうなされる。職員の誰もが心にふたをして、処分を続けていた。
そんなある日、獣医・高野綾子(田中裕子)がセンターの新所長として配属される。高野は着任早々「犬と猫には全部名前をつけて」と言い、トリマーを呼び寄せ動物たちをきれいにする。現状を変えるという高野の想いに、背中を押された牧田たちは殺処分を減らそうと動き始める。しかし、無責任な飼い主はいなくならず、職員たちは大きな選択を迫られる。

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脚本:青木研次
監督:緒方明
音楽:coba
出演:加瀬亮、戸田恵梨香、田中裕子
渋川清彦、黒田大輔、岡山天音、諏訪太朗、篠原篤、柳英里紗、高橋長英、
島かおり、きたろう、熊谷真実
4月2日(土)夜9時よりWOWOWプライムにて放送

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4月2日(土)13:00~「それでもボクはやってない」
4月2日(土)15:30~「劇場版 SPEC~天~」
4月2日(土)17:35~「劇場版 SPEC~結(クローズ)~ 漸(ゼン)ノ篇」
4月2日(土)19:15~「劇場版 SPEC~結(クローズ)~ 爻(コウ)ノ篇」

加瀬亮ヘアメイク/細川昌子(ベレッツア スタジオ)
加瀬亮スタイリスト/梶雄太