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【第31回東京国際映画祭】アジアの未来 『ミス・ペク』Q&A イ・ジウォン監督/脚本 「ミス・ペク」に込められた意味

【第31回東京国際映画祭】アジアの未来に出品の映画 『ミス・ペク』 の イ・ジウォン監督が、10月27日(土)にQ&Aに登場した。

幼いころに母親から虐待され、捨てられた女性・ペクが、虐待されている少女・ジウンと出会い、彼女を救おうとするのだが…。
児童虐待という重いテーマを正面からとらえ、ペクの過去の秘密や児童虐待の暗部、事なかれ主義や無関心の冷たさと子供を救おうとする人たちの温かさとをみごとに織り交ぜて、ハラハラドキドキのエンターテイメント・サスペンスとして98分を一気に見せる。

主役ミス・ペクを演じるのは、ドラマ『イ・サン』のヒロインで知られるハン・ジミン。
清純で可愛らしい韓国女優の代表というイメージのハン・ジミンが、不幸な過去背負い恵まれない環境に居ながら、子供を救おうとする女性を体当たりで演じている。IMG_6857

本作は10月上旬に行われた釜山映画祭でも注目を集めたが、脚本も担当したイ・ジウォン監督は、海外での上映の場に登壇するのは初めてとのことで若干緊張の面持ち。 司会や客席からの質問に丁寧に答えた。

韓国での興行について「韓国で公開して2~3週になる。低予算映画のために最初の上映映画館数が少なかったが、クチコミで広まって興行成績が良くなってきた」と笑顔をのぞかせる。

「元々虐待について関心がなかったが、一時期、家で子供が毎晩うめくような声をきいていた。あるとき家の傍で通りがかりに子供に救いを求めるような目で見つめられたことがあった。その時は無視して通り過ぎてしまい、しばらくして、その子供は引っ越してしまったが、自責の念にかられ、1人でも救われて欲しいと思ってシナリオを書き始めた」と制作のきっかけを語った。

ラストシーンについての観客からの質問には「2人の未来が開かれたものであって欲しいという願いから、ああした描き方にした。ペクは『自分は子供に近付いてはいけない人間だ』と考えて、ふたりが最後に会ったのかもしれないし、2人が一緒にいる明るい未来なのかもしれない。それは観客にゆだねたい」と話した。

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題名となったミス・ぺクについては「韓国で数年前まで女性を呼ぶときにミス・姓で呼ぶ場合、見下すような意味合いが含まれていた。本作の主人公も前科者で、単純肉体労働しか仕事がなく、まわりからミス・ペクと呼ばれており、彼女自身も自分を卑下していた。初めて虐待されている子供・ジウンと出会った時には、まだジウンに心を開いていないのでミス・ペクと呼ばせました。2人が近付くとジウンにとって『ミス・ペク』は魔法の呪文のような言葉としてつぶやかれます。」と日本の観客にとって貴重な説明も。

さらに「主演女優のハン・ジミンの、これまの純粋・清楚のイメージとは違う今回の役柄は、韓国でも驚きを持って迎えられ、彼女が海外での映画祭で主演女優賞を受賞したこともあり、本作の人気に良い影響をあたえています。自分もハン・ジミンに純粋・清楚のイメージを持っていたが、本作の制作開始前にハン・ジミンに会った時、実像はエネルギーにあふれたカリスマ性を感じさせる女優でした。その後、どこで彼女がこの作品のシナリをを入手したのか、彼女から『児童虐待に関心もあり、本作に出演したい』との申し出がありました」「子役のキム・シアはオーディションで6000人から選ばれた本作でデビューの全くの新人。この物語が実際にあった事件なのだと伝えたかったので、すでにイメージがついている子役を使いたくなかった」と映画祭のQ&Aだからこそ聞ける秘話も明かされた。

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監督 イ・ジウォン
キャスト ハン・ジミン、キム・シア、イ・ヒジュン
98分 2018年 韓国
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31ASF05