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舞台『人間風車』インタビュー 演出・河原雅彦×主演・成河 「ホラーとして秀逸で、それと同じくらいコメディとして楽しい」×「僕は全面的に興奮をしています!」

後藤ひろひとが劇団「遊気舎」に1997年書き下し上演し、その後2000年には生瀬勝彦、斉藤由貴、阿部サダヲ、2003年には入江雅人、永作博美、河原雅彦というキャストで上演された舞台『人間風車』。
豪華な出演者と作品の与えた衝撃の大きさから伝説の舞台とされてきた。その作品が、14年ぶりに、この9月28日から東京・大阪・高知・新潟など全国7都市で上演される。

今回のキャストも豪華。
会話劇からミュージカル、そして高度な身体表現を求められる作品まで、縦横無尽の活躍をみせる成河、舞台出演は2作目ながら映像作品に数多く出演し演技力を高く評価されているミムラ、バラエティからミュージカルまでめざましい活躍をみせる加藤諒。
さらに矢崎広、松田凌、良知真次と多くの舞台で主演を演じてきた出演者がずらり揃う。
今回は加藤諒が演じるサムを2003年に演じた河原雅彦が演出を担う。

今回Astageは公演初日まで2週間となった稽古場を訪ね、河原と成河に稽古の様子と初日迫る作品について語ってもらった。

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―お稽古はいかがでしょうか?
河原:いい感じです、とっても。稽古場では演出家と俳優という立場でしっかりコミュニケーションとっていますが、稽古場を離れたところでは距離を置いているので、みんなが実際どんな人間なのか一切知らないですが。(笑)
成河:今回のキャストは出自がいろいろですからね。
河原:たった一ヶ月の稽古で、みんなを同じ方向に向かせるって大変なんですよ。出自が違うと各自がこれまでにやって来ていることが違い、大切にしていること、得意としていること、不得手なことがバラバラです。不得手なことについてはダメを出し続けるしかない。それに対して今回は全員が排他的ではないです。僕は若い頃には排他的で、今にして思うと良くない俳優でした…。(笑)
稽古が始まってみないとわからないことなのですが、今回は皆が「一つに向かおう」ということに対してポジティブです。一人でもネガティブな人がいて諦めてしまうと作品が死んでしまうものですが、今回はそんなことも無く、とっても順調です。
やはりいい子たちが多かったですね。

―できることがバラバラという点では、成河さんはオールラウンダーだと拝見しています。
成河:オールラウンダーなんてとんでもないですよ!今、河原さんの話を聞きながら、この2~3週間を走馬灯のように思い出していました。全員ができること・できないことがある。オールラウンダーなんてありえないです。
いろんなジャンルからキャストが集まるのは、最近ではよくあることですし、これからもそうなることが増えるだろうと思います。そのキャスト全員が1つの方向を見るのはやはり難しいことだと思いますが、河原さんはしっかり向き合ってつきあって下さる。
河原さんは俳優をやってきていらしたので「俳優がどうすればいいか」に特化して話をしてくださるので、キャストとしては僕も含めて楽しいんだろうと思います。「こんなやり方があるんだ」「こういう考え方をすれば、こうなるんだ」と発見をしている最中で、俳優の作業として楽しいです。作品はちょっと大変ですけれど。

―出演者に新しい発見はされましたか?
河原:いっぱいありますね!良知くんが面白いですね。彼は“魅せる”芝居の真ん中をずっと張ってきて俳優。そんな種類の舞台の主役は真ん中にしゃんといて、終始自分をどう“魅せる”かを一番に考えなきゃいけない。その場合、世界観を作ったりいろいろするのは周りの人。だけど今回は、その周りの一人にならなきゃいけない。
本読みをして、稽古が始まった頃は、どうなるかなと思っていたら、彼が熱を出して稽古を休んだんです。
成河:どうしたのかと思いましたね。
河原:そう。「もう来ないのか?」と心配していたら、3日ほどして咳をしながら稽古場に来て、その後はメキメキ!!(笑)
成河:(笑)
河原:例えば、稽古場でもらった課題は、後日同じシーンをやったときに「消化してから来たな」というのがちゃんとわかります。自分がやったことがないことも楽しんでいる。もちろん成河や周りもフォローしてくれていると思いますし。
僕らと違う芝居をやってきたからこそ、彼が発想することは良い意味で普通の俳優では思いつかないことも多く、いろいろと楽しませてもらってます。
矢崎もね、順調ですよ~!松田もがんばってるって予想できるでしょ。(笑)
あ、諒にも触れておいた方がいいですね。彼は独特です。
成河:独特ですよね。
河原:彼とは俳優としてまだまだこれからという時代から一緒に仕事をしています。人間は変わらないですが、メディアやバラエティにたくさん出て、仕事を一つ一つ重ねていく中で、表現していくことの幅や自信みたいなものが培われたんだということが、稽古を始めてすぐ分かりました。ほんの数年ですごく進化しています。
彼が演じるのはサムという役ですが、本当にいいです!良いところは突出して良い。ダメなところは、とことんダメだけど(笑)、まだ稽古期間もあるし、諒のサムには伸び代がある。(初演のサム役の)阿部(サダヲ)くんとも(再演のサム役の)僕とも全然違います。彼には唯一無比の愛嬌がありますからね。
成河:なんか諒くんだから許されちゃう部分はありますね。 (笑) それに諒くんは常にすごく一生懸命で、優しいです。すごく気遣いがある。良くも悪くも他人に対して強気で行けないところがあるので、そこをいっぱい話し合いながらやっています。

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―成河さんはミムラさんと向き合う場面が多いですよね?ミムラさんは舞台出演は2作目だそうですが。
成河:舞台は2作目とはいえ、女優としては本当に勉強も研究もしてらっしゃいますし、映画なども僕なんかが足元にも及ばないくらいたくさん見ておられて、ものを考えていらっしゃるので、お話するのはとても面白いですよ。ちょっとしたことでも、自分なりに繊細にすごく考えていらして、その一つ一つにハッとさせられたりします。とてもスリリングです。

―すごく刺激を受けておられるんですね。
成河: すごく受けています。そして僕等を若手といっていいかわかりませんが、20代30代の役者にとって、堀部(圭亮)さんはヒーローです。堀部さんの選択だとか、俳優役者としての実直さとか、稽古場ではブームです。言い方は難しいですが「手練れ」です。勉強することが、すごく多いです。

-成河さんの本作での苦労とは?
成河:どの作品でも苦労はあるのですが、この作品の初出は1997年、僕が高校生の頃です。この頃の小劇場の作品ということで、ごった煮のエネルギーがある。何か1つの専門的な様式に頼らず、いろんな引き出しを出しきって全部をぶち込んだ作品で「あの時代は戦国時代だったんだなぁ」と思います。そんな作品で、これだけ大きな役割を頂くことは今までなかったので、引き出しがいくつあってもたりない。本当に大変です。とにかく全部使って面白くしなきゃいけない。でもやりがいは感じています。

―お稽古場もエネルギーにあふれてアツそうですね?
河原:物語の前半は愉快なシーンが多いので稽古も楽しい。後半は(顔しかめて)「あ~・・・」ってなりますね。(笑) 後半の稽古はやりたくないわけではないのですが…
成河:やりたくないでしょう!(笑)
河原:前半と後半では色が違うから、2種類の芝居の稽古に来ているような、他の作品とは全然違う感覚ですね。

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―その作品についてですが、題名の『人間風車』の由来はプロレスの技なんですね?
成河:知らない人は、全然知らないですよね。
河原:でも、ちょっとロマンチックな題名じゃない?いかようにも想像できる秀逸な題名だと思いますよ。「素敵なお話だよ」と聞けば「そうかな」と思えそうな・・・。

―えっ…、怖いイメージが先行していました。
成河:題名のフォントがダブってたり、怖い雰囲気があるからかな。
河原:そうかぁ。楽しい方をキャッチコピーにしとけばよかったか・・・。 (笑)

―では「怖い」なんてイメージに縛られないで観に来たほうがいいですか?
成河:そう思いますよ。ホラーだといいますけど、お化けとか出てきませんし、すごく現実として分かることばかりのお話です。
河原:「ホラー」って言葉は強いから、その前に「ファンタジー」だ「愉快」ってついても「ホラー」の威力にひっぱられちゃうよね。

―「怖い」だけじゃないんですね?
河原:楽しいこと、いっぱいあります!
成河:(爆笑)
河原: もちろん、ホラーとして秀逸で、お芝居としてちゃんと面白いです。それと同じくらいコメディとしてすごく楽しく観られます。始まって1時間20分くらいで怖くなってくるから、ホラーが怖い人はそこで帰ってもいいです。(笑)
成河:休憩はないんですけどね。
河原:前半の楽しい時にも「これが後々どう怖くなるんだ」とか、考えなくていいです。
成河:ホントに何も考えず楽しんでいいと思いますよ。

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―本作は再演が重ねられている作品で、以前も観て期待されている方も多い。一方で「えっ?どんなお芝居?」と思っておられる方もいらっしゃると思います。本当に何が観られるのか、興味がつきないのですが…
河原:それはミムラさんにしても成河にしても、そして僕も新しいことです。作品を預かる上で、前のものをなぞればいいとは誰も思っていない…誰か思っているかな?(笑)

―もっと面白いもの…ですよね?
河原成河:(声をそろえて)今、面白いものを!

―今ですか! 今回は初演・再演とは違うのだと聞きました。
成河:まず台本が・・・ね。
河原:違いますね。昔のも、今のもどっちも面白いんだけど、今やるならこっちだろうなと思います。たぶん今回の台本を昔やっていたら再演にはなっていないでしょうね。だからこれで終わりだと思います。
成河:ハハハ!! 後藤さんから始まって「真っ二つになるだろうな」ということを引き受けて今、作っている・・・ということですね。「真っ二つ上等ですよ」ということです。

―逃げ道はないんですね。
河原:フィクションですが、きれいごとは無いお話です。お客様にはお金を払って観に来て頂くので、気持ちよく劇場を後にして頂くというのが基本姿勢ですが…、今回はそれがない。ですから、突き詰めています。今、このご時世で嘘は良くないです。ばれちゃいますからね。(笑)
成河:演劇としては、常に「今の僕たちにとって」ということを軸に置くべきだと思うのです。今の自分が観客で「嘘やきれいごとの終わらせ方をどう受け取るのかな」と考えた時に「今の僕たちが嘘なく感じるもの」を考えることが一番大事だと思います。そういう意味で、「今回はこうです」ということに、僕は全面的に興奮をしています!

―では最後にこの作品について伝えておきたいこと・・・お願いします。
成河:好き嫌いは人間ならあります。「嫌いだから、もう観ない」っていう人がいても全然いいのですが、「嫌いだったのに、なぜこんなにずっと残っちゃっているんだろう」ってこともあっていいと思います。僕自身も好き嫌いを超えて感動してきた覚えがあるし、心に残っている作品があります。だから好きなものだけつまむのは、演劇ではもったいない気がします。
好き嫌いを超えたところで「うわぁ!」っていう体験ができる場所は少ないと思いますが、そういう作品になれたらいいなあと思いますし、なるんじゃないかと思っています。
そういう演劇の味わい方をしたことがない方には、是非一度「なんだ、これは?!」というものを『人間風車』で持ち帰って頂きたいです。

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PARCO&CUBE 20th present 「人間風車」
作:後藤ひろひと  演出:河原雅彦
出演:成河、ミムラ、加藤 諒、矢崎 広、松田 凌、
今野浩喜、菊池明明、川村紗也、山本圭祐、
小松利昌、佐藤真弓、堀部圭亮、良知真次

【東京公演】
公演日程=2017年9月28日(木)~10月9日(月・祝)
会   場=東京芸術劇場プレイハウス
入場料金(全席指定・税込) =S席8,900円 、A席7,800円

各地公演
【高知公演】2017年10月13日(金)高知県民文化ホール・オレンジホール
お問合せ:高知新聞企業 事業企画部 TEL 088-825-4328

【福岡公演】2017年10月18日(水)福岡市民会館・大ホール
お問合せ:ピクニックチケットセンター TEL 050-3539-8330

【大阪公演】2017年10月20日(金)〜22日(日)森ノ宮ピロティホール
お問合せ:キョードーインフォメーション TEL 0570-200-888

【新潟公演】2017年10月25日(水)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
お問合せ:サンライズプロモーション北陸 TEL 025-246-3939

【長野公演】2017年10月28日(土)ホクト文化ホール・中ホール
お問合せ:サンライズプロモーション北陸 TEL 025-246-3939

【仙台公演】2017年11月2日(木)電力ホール
お問合せ:仙台放送 事業部 TEL 022-268-2174

公演に関するお問い合わせ=
パルコステージ 03-3477-5858(月~土11:00~19:00/日・祝11:00~15:00)
http://www.parco-play.com/
キューブ 03—5485-2252(平日12:00〜18:00)
http://www.cubeinc.co.jp/