Open Close

白井晃が芸術監督に就任 KAAT 2016年度ラインナップ発表

2010年7月に開館したKAAT神奈川劇術劇場が、2016年4月より、それまで芸術参与して運営に参画してきた白井晃を芸術監督に迎える。
1月19日、2016年4月から公演の白井晃演出の『夢の劇-ドリーム・プレイ-』を皮切りにした年間プログラムを発表。積極的に近現代劇にとりくんでいくという。

IMG_0246

左から 長塚圭史 やなぎみわ 塩田千春 首藤康之 谷賢一 杉原邦生 串田和美 白井晃

また同日、その『夢の劇-ドリーム・プレイ-』の制作発表も行った。
この日発表されたのは、下記ラインナップ。
①KAAT神奈川芸術劇場プロデュース/白井晃演出作品
「夢の劇-ドリーム・プレイ-」            4月 KAATホール内特設ステージ

②KAAT神奈川芸術劇場プロデュース/やなぎみわステージトレーラープロジェクト
「日輪の翼」                    6月  横浜赤レンガ倉庫 イベント広場

③KAAT神奈川芸術劇場プロデュース/キッズ・プログラム2016/岡田利則演出作品
「わかったさんのクッキー」          7月  KAAT中スタジオ
鎌倉、小田原 県内3ヵ所他、全国11か所予定

④KAAT神奈川芸術劇場プロデュース/構成・演出:白井晃 出演:山本耕史 ほか
『マハゴニー市の興亡』              9月 KAATホール

⑤KAAT神奈川芸術劇場プロデュース/KAAT Dance Series 2016
塩田千春展「鍵のかかった部屋」インスタレーションダンス・音楽プログラム 9月~10月 KAAT中スタジオ

⑥KAAT神奈川芸術劇場プロデュース/KAAT Dance Series2016出演:首藤康之 ほか
「DEDICATED 2016『ハムレット』」            10月KAATホール

『わたしは真悟』/脚本:谷賢一       12月   KAATホール

⑧KAAT神奈川芸術劇場プロデュース/杉原邦生演出作品
『新作(タイトル未定)』                 12月KAAT大スタジオ

⑨KAAT共同制作プロジェクト/蜷川幸雄演出作品
『近松心中物語』              2017年1月~2月 KAATホール

⑩KAAT共同連携プロジェクト/串田和美演出作品
『K.テンペスト2017』             2017年3月KAAT中スタジオ

IMG_0167

4月から芸術監督となる白井晃は「一昨年から芸術参与をつとめてきた。2年間の勉強期間助走期間をもらい、KAATの利点と課題が分かった」ということで「東京との微妙な距離感を利点転化したい」「先鋭的な作品づくりを提示していく」と、「東京の劇場とは一線を画した、特色のある独特な劇場にできればな」と方向性を示した。「演劇の枠組みが崩壊しつつある」という今に「音楽、肉体表現としてのダンス、美術が混ざり合ったことができる空間」「想像する劇場として若い人と一緒に長期間かけて物を作っていく」「冒険のできる劇場としてベテランの演劇人にも声をかけていきたい」と意欲的に語った。
その就任第1作は脚本・出演を長塚圭史が担当。同日に制作発表が行われた。

IMG_0183

 

6月に中上健二の同名小説を原作とした 「日輪の翼」を、ステージトレーラーという聞き慣れない舞台を披露するのはやなぎみわ。
ステージトレーラーとは、台湾ではポピュラーな移動舞台車とのこと。展開するれば15mもの広さの舞台になるという。日本の公道を走れるように特注したが、搬入用エレベーターに乗らないのでKAATではなく赤レンガ倉庫でやることになった。
サーカス、ダンスが演劇に混じった舞台を披露すると言う。

IMG_0173

9月の白井晃の演出、山本耕史ほかの出演で元はオペラを日本の状況に見立てた『マハゴニー市の興亡』に続き、10月はベルリンを拠点に活動し、ベネチアビエンナーレ日本館で注目を集めた美術作家・塩田千春のインスタレーションが開催される。週末にはこの空間を使ってダンサーが出演し、美術とパフォーマンスアートが連携したダンスシリーズが展開される。

IMG_0198

10月には「2011年に舞踊は社会に対する奉仕であるという意識でDEDICATEDを始めた」という首藤康之が「舞踊は抽象的だが、戯曲を取り入れてやっていこうとおもいついて 今回は死がテーマなので頭をよぎった」という『ハムレット』を上演。

IMG_0204

12月は楳図かずおが1980年代に世に問うた野心作「わたしは真悟」を谷賢一の脚本で舞台化する。谷は「とても素晴らしい演出家が決まっているので楽しみにして頂きたい」「とてつもなく挑戦的」「芝居にするなんて気がくるっていると思われるような作品」と語りながら、この作品に取り組める嬉しさにあふれた表情を見せた。

IMG_0207

プロデュースユニット「KUNIO」を立ち上げ評価が高まっている杉原邦生が演出と美術を担当し「映画ドックビルからインスパイアされた作品」という新作(タイトル未定)を12月に上演する。杉原が「冷静に粘着して書く」松井周に脚本を依頼。「集団」と「現代社会」を描くことになりそうだ。

2017年1~2月には、過去に20回程度の再演され、150万人が見ている舞台『近松心中物語』が、さいたまと共同制作で進行中とのこと。

IMG_0211

そして3月には串田和美がシェイクスピアの大作を「ワークショップをやりながらキャスティングをした」「時間をかけて作った作品」という「K.テンペスト」を2017年版で上演する。白井晃も俳優として出演する。

続々と意欲作が上演されるKAAT。注目していきたい。