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演劇か裁判か?! 【動画あり】 舞台【TERRO-テロ-】公開ゲネプロ 評決を下すのはあなた

2012年本屋大賞「翻訳部門」1位を受賞したリーガルサスペンス作家、シーラッハの2015年の初戯曲【TERRO-テロ-】の日本初演の幕が、1月16日に開いた。
前日15日に行われた公開ゲネプロの模様を動画を中心にご紹介する。

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164人乗りの旅客機がハイジャックされた。行き先は7万人収容のサッカースタジアム。
7万人の命を救うために旅客機を撃墜した空軍少佐は 有罪か、無罪か?!

舞台上ではまさに裁判そのままに1つ1つの事実が明らかにされていく。
観客は俳優たちの発する一語一句を聞き逃すまいと見つめ、聞き入り、演劇だと思えない切実な緊迫感が客席を覆う。
テロという問題を、切実に考えることをしてこなかった私に、この裁判は厳しい現実を突きつけてくる。

被告人の弁護士に橋爪功、検察官に神野三鈴、裁判長役を今井朋彦、被告人の少佐役には松下洸平、飛行機乗客の遺族を前田亜季、証人として登場する軍人に堀部圭亮という実力派俳優たちが、裁判という殺伐とした場に人間味を感じさせる人物像を作り上げた。

そして、できる限りの事実が明らかにされた裁判の最後には、それを見守った観客の手に評決がゆだねられる。

橋爪功の朗読劇として2016年に上演された4回の公演では、観客の評決はすべて有罪となったのだが、このゲネプロでは有罪26票、無罪39票で無罪の表決がでた。
だが翌日の初日公演では有罪の評決が出たと聞く。

あなた自身は、どう考え、どういう判断を下すのか。
そして、そのときの裁判の評決はどうなるのか。

ぜひとも、自分自身でこの裁判に参加し、自ら考え、選んで欲しい。

東京公演は1月28日(日)まで、新宿・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA。その後、兵庫・名古屋・広島・福岡公演が予定されている。

橋爪功コメント
年明け早々おつき合いいただくには、「TERROR」に込められた想いとテーマは、少々大きく、重きに過ぎるものかも知れません。何せ、ドイツの辣腕弁護士にして小説家であるシーラッハ氏が、長年温めた題材を初めて戯曲にしたためた作品ですから。けれどテロは遠い外国のことではなく、日本の私たちにとってもすぐそばに迫っている脅威だと思うのです。
不特定の膨大な情報が流れ込んでくる、種々の報道やネット環境とは違い、演劇は精査された知識と思索に対して開かれた「窓」です。普段は目を背けがちな、世界と人間の抱える問題について劇場でひと時、私たちと一緒に心を傾けていただくお客様に深く感謝致します。

今井朋彦コメント
この作品の主役は事件そのもので、主体は参審員であるところのお客様です。裁判長は証言を引き出す、参審員に結論を導く役回りだろうと意識しながら稽古してきました。舞台上の登場人物が話しを聞かせている相手は、参審員である客席です。稽古場でも常にそのことを意識してきましたが、実際に客席空間を前にすると稽古場とはまったく違った感覚で、稽古場で想像していたより芝居の“アテ”が見つかった気がしています。初日を迎えれば、さらに感じ方や芝居そのものも変わるかもしれません。作品の最大のポイントは、有罪か無罪かの判断を最終的には観客が下さなければならないという点。登場人物たちの台詞や仕草の一つ一つが、有罪に傾いたり無罪に傾いたりと、見る側の気持ちを変えていくのを楽しんでいただければと思います。

松下洸平コメント
これまでの自分の演劇経験の中では最高に難しい作品でした。今回のコッホ少佐は超優秀な軍人という設定ですし、声を荒げたら負け、という裁判の中で毅然としていなくてはならない役です。厳しい質問に誠実に回答しながらも、感情は動きます。でも、それを表せない。感情を表したらダメな役というのは本当に大変で……(笑)。先日の稽古では、じっと手を組んでいた腿のあたりに手の跡がついてしまうくらい汗をかいていました(苦笑)。客席の皆さんは芝居を観ているのか、参審員として本物の裁判を観ているのか、しばしば錯覚する局面があると思います。緊張感のある舞台なので、そこを楽しんでいただきたいですね。自分としては今回の作品に参加できたこと、今回いただけた役を演じるのは大きなチャレンジなので、全力で明日からの本番と向き合っていきます。

神野三鈴コメント
不器用な私に、台詞の一語一音まで緻密な演出をつけて下さった森新太郎さんや、橋爪功さんを始めとする頼もしい共演陣に支えられ、稽古の日々を走り切ることができました。
劇場は本来、束の間日常を忘れ、心を解放するために足を運ぶ場所。けれど「TERROR」は、お客様に「命」や「罪」についての深い思索と大きな決断を迫ります。だからこそ、お客様と私たちの間には想像を共有したことで壮大なドラマの伽藍が築かれ、終幕には互いの健闘を讃え合う拍手が響くはず。この舞台はきっと、そんな奇跡のような時間を生み出してくれると信じています。

森新太郎コメント
研ぎ澄まされた作家シーラッハの強靭な台詞と、そこに宿る思い問いかけに導かれ、余分なものを全てそぎ落とした、人間と言葉だけが息づき・ぶつかり合う、まだ誰も見たことのない舞台が誕生しました。これを実現するため、過酷な要求に応えてくれた俳優陣に心から感謝しています。
でも作品を完成させるには観客が席に着き、裁判に参加して下さることが不可欠。「TERROR」における一番の主役。結末を左右し、作品の持つ意味合いを変える力を持つのは観客なのですから。テロの暴力と不条理に向き合い、“演劇を越える演劇”をお客様に体験していただけたら幸いです。

 

タイトル:TERRORテロ
原作:フェルディナント・フォン・シーラッハ
翻訳:酒寄進.
演出:森新太郎
出演:橋爪功 今井朋彦 松下洸平 前田亜季 堀部圭亮 原田大輔 神野三鈴
http://www.parco-play.com/
【東京公演】  紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
2018年 1 月16日(火)~1月 28日(日)

【兵庫公演】兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2018年2月17日 (土) ~2018年2月18日 (日)

【名古屋公演】名古屋市芸術創造センター
2018年2月20日(火) 18:30開演

【広島公演】JMSアステールプラザ 大ホール
2018年2月21日(水) 19:00開演

【福岡公演】福岡国際会議場メインホール
2018年2月23日(金) 18:30開演