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映画「RYUICHI SAKAMOTO DOCUMENTARY PROJECT(仮題)」坂本龍一が「全てをさらけ出した」ドキュメンタリー映画、公開決定!!

世界的音楽家である坂本龍一を追ったドキュメンタリー映画「RYUICHI SAKAMOTO DOCUMENTARY PROJECT(仮題)」の公開が決定した。本作は、2012年から5年の長期間に渡る本人への密着取材によって実現したもので、併せて幼少からの膨大なアーカイブ素材も映画を彩っている。大病(2014年)を経て、過去の旅路を振り返りながら、新たな楽曲が誕生するまで、坂本龍一の音楽的探求を正面から描いた作品である。

sakamotos

3.11以後、宮城県名取市で被災ピアノと出会った坂本。自然の猛威によって水に溺れたピアノの音を聞き「痛々しくてその鍵盤に触れるのも辛かった」と語る坂本は、今はその壊れたピアノの音色がとても心地良く感じると語っています。時と共にその被災ピアノの「自然の調律」の音は、サンプリングを通じて坂本の作曲プロセスの一部になり、新たな表現へと生まれ変わっていきます。そして過去の坂本龍一の音への探求の描写が、積み重なるコラージュのように、現在の坂本の作曲プロセスと見事に交差していきます。

どこか脆い幻想のようなバブルの時代。坂本はYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の一員として、日本のエレクトロニクスやテクノロジーを象徴するポップアイコンとなりました。そして「戦場のメリークリスマス」、「ラストエンペラー」に出演、その映画音楽をも手がけ、「戦場〜」では英アカデミー賞、「ラスト〜」では米アカデミー賞をそれぞれ受賞しました。2001年9月11日、ニューヨークの自宅近くで起きた米同時多発テロによる圧倒的な暴力、それが生み出す世界の不均衡と非対称を感じつつ、人間の暴力性の生物学的なルーツを追い求め、音楽の原点をも探しました。

震災から3年を経た2014年3月11日には、自ら防護服を着用し福島第一原発を囲む特別警戒区を訪れ、無人の地と化した集落の残像の音に触れました。テクノロジーに頼る現代人の営みが、自然環境を蝕み、人間の生き場所をも奪ってしまうことへの悲しみが、本作内における坂本の作曲プロセスの根底にあるようにも感じられます。

2014年7月には中咽頭ガン罹患を公表。1年近くに及ぶ闘病生活を経て、山田洋次監督作『母と暮せば』、第88回アカデミー賞で3部門の受賞に輝いたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作『レヴェナント:蘇えりし者』の音楽を同時期に手がけ復帰。2017年3月には、8年ぶりとなるオリジナル・アルバム(タイトル未定)がリリースされます。カメラは、楽曲制作の現場に密着し、そのアルバム制作の様子の一部始終を捉えており、坂本龍一の最終楽章の始まりがスクリーン上で奏でられます。

監督/プロデューサー:スティーブン・ノムラ・シブル
出演:坂本龍一
配給:KADOKAWA
公開:2017年11月、角川シネマ有楽町ほか全国公開

【コメント】
坂本龍一
2012年にNO NUKES 2012を撮影できないか?とスティーブン・ノムラ・シブルという映画制作者から連絡が入った。それ以来、官邸前のデモや、東北ユースオーケストラとのコンサート、そしてガンがわかって映画制作のスケジュールに大きな変更が余儀なくされても、僕の側にはいつもカメラがあった。スティーブンは僕に何を見たんだろう?プライベートスタジオも、自宅のピアノ室も、全てさらけ出した。こんな映画に坂本の私生活を覗くという以上の意味はあるんだろうか?果たして映画として「見れる」作品となっているんだろうか?-いま、僕は完成が待ち遠しい。

スティーブン・ノムラ・シブル監督
震災後、坂本龍一さんの音楽表現がどのように変わるのか、新たにどのような曲を書かれるのか、もしそこまで密着可能であれば、何かカタルシスが生じるのではないかとの思いが、この映画を作り始めるきっかけでした。ご病気の事もあり、本格的な作曲プロセスの記録を始めたのは撮影開始から4年後の事、長い撮影期間となりましたが、映画を通じて、映像と共に音楽や音の魅力を表現できればと、今も願っております。是非皆さまに劇場で音楽的カタルシスを体験して頂きたく思います。

【プロフィール】
◆坂本龍一
1952年、東京生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、細野晴臣、高橋幸宏と『YMO』を結成。散解後も、音楽・映画・出版・広告などメディアを越え活動。1984年、自ら出演し音楽を担当した『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞ほかを、映画『ラストエンペラー』の音楽で米アカデミー賞、グラミー賞ほか受賞。以後、活動の中心は欧米へ。常に革新的なサウンドを追求する姿勢は世界的評価を得ている。1999年制作のオペラ『LIFE』以降、環境・平和問題に言及することも多く、アメリカ同時多発テロ事件をきっかけとした論考集『非戦』を監修。自然エネルギー利用促進を提唱するアーティストの団体artists’powerを創始するなど、活動は多岐にわたっている。2006年には新たな音楽コミュニティー「commmons」をエイベックスとともに設立。また、2007年一般社団法人「more trees」を設立し森林保全と植林活動を行なうなど90年代後半より環境問題などへ積極的に関わる。
東日本大震災後、『www.kizunaworld.com』、『こどもの音楽再生基金(http://www.schoolmusicrevival.org)』、『東北ユースオーケストラ(http://tohoku-youth-orchestra.org/)』など、さまざまな被災者支援プロジェクトに関わるとともに、脱原発を訴える活動をおこなっている。主な作品に『B-2 UNIT』『音楽図鑑』『BEAUTY』『LIFE』『out of noise』、著書に『音楽は自由にする』、共著に『縄文生地巡礼』、『いまだから読みたい本3.11後の日本』、『NO NUKES 2012 ぼくらの未来ガイドブック』など。1990年より米国、ニューヨーク州在住。

◆スティーブン・ノムラ・シブル/Stephen Nomura Schible
1970年、東京に生まれ、バイリンガルで国際的な環境で育つ。母親は日本人、父親はアメリカ人。18歳の時に、ニューヨークに移住し、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。在学中、マイケル・ムーアなどにも影響を与えたドキュメンタリー作家の原一男(『ゆきゆきて、神軍』)のアシスタントディレクターとなり、卒業後、日本のテレビ向けでアメリカで撮影される様々なドキュメンタリーの制作に携わる。1990年代後半には、プロデューサー代理として、主要映画祭で注目される日本映画のマーケティングやファイナンス業務を行い、青山真治監督『ユリイカ』、河瀬直美監督『火垂』等、海外窓口を務めた。諏訪敦彦監督作品、マルグリット・デュラス原作『H Story』にも関わり、日本で撮影される国際共同製作の制作管理にも関わる。2002年、2003年には、全編日本で撮影された『ロスト・イン・トランスレーション』の共同プロデューサーを務め、日本サイドの全製作業務を任された。スカーレット・ヨハンソン、ビル・マーレイ主演の本作は、アカデミー賞作品賞ほか4部門にノミネートされ脚本賞を受賞した。また、エリック・クラプトンとコラボレートし『エリック・クラプトン:セッションズ・フォア・ロバートJ』を監督・プロデュース。BBCやPBS等より世界的に放映されたプロジェクトを、企画から立ち上げ、クラプトンが敬愛するブルース界のレジェンド、ロバート・ジョンソンへのトリビュートとなった。以後、広告コンテンツの制作等も行いながら、映画制作を続けている。ニューヨーク州在住。

2017年11月、角川シネマ有楽町ほか全国公開